介護離職防止に向けた取り組み、7割以上の企業で不十分と自覚
2017年1月12日 10:08
現在、介護が理由で仕事を辞める人が全国で年間10万人に上るとされ、2020年初頭までに「介護離職ゼロ」を目指す政府に具体的な改善策の提示が迫られている。こうしたなか、東京商工リサーチが介護離職の現状を把握すべくアンケート調査(有効回答7391社)を実施した。同調査結果によれば、過去1年間に介護を理由とした離職者が発生した企業は約1割(724社:9.2%)となった。一方で約7割(71.3%:5272社)の企業で「将来的に介護離職者数が増える」と予想しており、その理由としては「従業員の高齢化に伴う家族の高齢化」が約8割(81.9%:4318社)、「現在の介護休業、介護休暇制度だけでは働きながらの介護に限界がある」が約6割(58.0%:3060社)、「公的な介護サービス縮小」が3割強(34.5%:1821社)となっている。
企業が仕事と介護の両立に向けて整備している制度や取り組みについては「就業規則や介護休業・休暇利用マニュアルなどで明文化」が約5割(47.3%:3503社)となり、これ以外にも「介護休業や介護休暇の周知、奨励」(17.5%:1299社)、「従業員の介護実態の把握」(16.5%:1226社)などが上位に挙がった。これに対して、自社の取り組みが十分と考えていない企業が約7割(72.4%:5358社)に及び、その理由については「介護休業、休暇を取得中のフォローアップ体制が整備されていない」(52.1%:2793社)、「介護休業、休暇を取得後のフォローアップ体制が整備されていない」(39.4%:2113社)が多く上がった。その他でも「少人数での経営のため休業者のバックアップが難しい」、「休業者に代わる人材が確保されていない」など、人手不足に起因する回答も目立った。
1999年度に施行された「育児・介護休業法」が今年1月1日に改訂され、介護休業を3回までの分割取得可能とすることや、残業の免除などが付加されて現場でより活用しやすい形になっている。一方、企業や個人に対する報奨金などの制度が存在するが、これらが十分に活用されていない現状がある。今回の調査でも「介護離職防止支援助成金」の助成を受けたことがある企業はわずか0.5%(37社)にとどまり、「ない」が約7割(68.1%:5038社)、「分からない」が約3割同(31.3%:2316社)となっている。企業や個人に対する制度の浸透や、より活用しやすい雰囲気を作ることが介護離職ゼロに向けた課題となる。(編集担当:久保田雄城)