アトピー性皮膚炎の元凶となるタンパク質が特定、画期的新薬に期待

2017年1月11日 12:18

 九州大学の研究グループが、アトピー性皮膚炎のかゆみを惹起するIL-31という物質が産出されるに際し、EPAS1というタンパク質が重要な役割を果たしていたことを世界で初めて発見、その作用機序を解明した。

 アトピー性皮膚炎の患者は、実に人口の7~15%にも及ぶ。原因については、諸説あるが解明されていない。これほど膨大な数の患者がいながら、正体不明の病なのである。

 正体不明であるから、治療法を確立することが難しい。そもそも医学的には、かゆみ、というのは「掻把したいという衝動を引き起こさせる不快な感覚」と定義される。アトピー性皮膚炎は強いかゆみをもたらし、患者の生活のクオリティを著しく低下させる。ステロイド剤、免疫抑制剤はあるが、かゆみそのものを直接どうにかできる薬は、今の時点では、存在しない。

 まず過去の知見について見ていこう。アトピー性皮膚炎におけるかゆみ物質は、IL-31というものであるらしい、ということが明らかになっている。このIL-31は、ヘルパーT細胞という、リンパ球の一種から産出され、その受容体は感覚を司る脊髄後根神経節に多くみられる。しかし、その具体的な産出のメカニズムは不明であった。

 さて、今回研究グループは、「DOCK8」という分子を欠いたアトピー性皮膚炎患者が、重篤な症状を示すことに着目した。DOCK8を発現しないように遺伝子操作したマウスを作ると、そのマウスは重いアトピー性皮膚炎になった。つまり、DOCK8は普通は存在し、無いと困るというわけである。

 さらに、DOCK8を発現しない遺伝子形式について調べたところ、その形式においてはEPAS1というタンパク質が産出されていることが分かった。そこで今度はヘルパーT細胞においてEPAS1が産出されない遺伝子操作マウスを作り、このマウスと先のDOCK8欠損マウスとの間に子を作らせたところ、その間の子はまったくアトピー性皮膚炎を発症しなかった。

 つまり、EPAS1はヘルパーT細胞においてアトピー性皮膚炎の発現に深く関わっていたのである。この発見から、今後、アトピー性皮膚炎の「かゆみ」を元から絶つ治療薬の創薬が可能となるかもしれない、と期待できるという。

 この研究の詳細は、英国の科学雑誌「Nature Communications」オンライン版に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

関連記事

最新記事