普及するかテレワーク、中小企業を悩ます理想と現実のギャップとは

2017年1月10日 12:07

 IT技術を活用して自宅などで仕事をするテレワーク。育児・介護と仕事との両立や、労働力不足を補うための手段として、政府が普及を促している新しい勤務スタイルだ。しかし実際に導入している中小企業は14%にとどまることがNTTコミュニケーションズ<9432>の調査で分かった。さらに74%は「導入しておらず検討の予定もない」と回答した。一方で43%の経営者や従業員が「テレワークに興味がある」とも答えており、理想と現実のギャップに悩む現場の姿が浮き彫りとなった。

 政府はテレワークの普及を「働き方改革」の一環として盛り込んでおり、導入企業を2020までに12年度から3倍に増やす目標を掲げている。これに応えるようにIT各社はシステムの売り込みに力を入れており、例えば日本マイクロソフトは生産性向上のためのクラウドサービス「オフィス365」を開発、オフィスの外にいてもオフィスにいる社員と意思疎通が図れる環境を提供している。

 大手企業では導入の動きは既に広まっており、味の素<2802>はテレワーク実施のための環境を整えるべく、従業員に渡す持ち歩き用のパソコンなどに10億円強の予算を投入。本社の4部門で16年10月からテレワークを先行導入した。ことしの4月には全部門へ拡大する予定だ。来年度には1日当たりの所定労働時間を20分短縮して7時間15分にすることも決定済みで、「どこでもオフィス」になるテレワークにより勤務時間の短縮が図れるとしている。「出張や営業の移動時間を少なくできる。工場や研究所の仕事もかなり効率化できる」と好評だ。

 しかし中小企業はこうもいかない。今回の調査では経営者ら300人のうち半数以上の53%が「自身の技術活用能力に不安がある」と回答。「投資額の判断がつかない」など、テレワークに対しての知識不足を感じていることが明らかになった。また「設備投資のコストを捻出できていない」という資金調達に苦慮する声も目立った。

 「少数精鋭」で仕事をしてきたことに由来する懸念も多い。31%の経営者が「打ち合わせがしづらくなる」と答えた。さらに「会話が減る」「本当に仕事をしているか不安」などといった回答からは、元々社員同士の距離が近く、顔を合わせてコミュニケーションをとることに慣れている中小企業ならではの現状も浮かび上がった。

 

 そのような中で中小企業がテレワーク導入に踏み切るには、経営者や管理職と従業員との信頼関係が必要不可欠になるだろう。ある程度を現場の裁量に任せながらもこまめに勤務状況をチェックする。そんな上司がいる企業なら、従業員も期待に応えようとするのではないだろうか。(編集担当:久保田雄城)

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