ITと生命科学の融合領域、「睡眠と音楽、呼吸」への関心度が40%超
2017年1月9日 10:14
昨今のAIをはじめとするITの進化は目覚ましいものがあるが、ゲノム編集など生命科学の進歩も加速している。とくに2016年は、蓄積された研究結果が実際の治療に役立てられ始めた点で、遺伝子治療領域にとっての重要なターニングポイントとなる。イタリアのサン・ラファエル・テレソン遺伝子治療研究所では重度免疫不全症ADA-SCID患者の根治治療に成功し、遺伝子編集の分野では、生きた細胞内のDNAを改変できるCRISPR(クリスパー)という技術により、筋ジストロフィー患者の治療が実施された。これらの技術はビジネスとして展開が見込まれているが、将来的にはITと結びつくことによりさらにその領域が拡大する可能性がある。ITと生命科学の融合領域での研究開発材料のヒントを探るべく、先端テクノロジーに関するリサーチを提供するAQU先端テクノロジー総研は、10~60代の2200人を対象にアンケート調査を実施、IT、生命科学の融合領域においての関心度を計測した。
同調査結果によれば、関心度が最も高かった領域は「遺伝子とがん」の48.1%となった。以下「睡眠と音楽、呼吸」の41.1%、「睡眠とアロマの香り」の38.4%、「体内細菌の種類と病気」の34.5%、「笑いと血糖値」の34.3%と続いた。いずれもホットな研究テーマであり、たとえば「遺伝子とがん」では中国の研究チームが進行性肺がん患者に対してCRISPRを使った遺伝子改変により、免疫反応を抑制するT細胞を無力化する臨床試験を実施している。今後の研究テーマとしては、「音楽と脳内ホルモン」、「遺伝子とうつ病」などが挙げられる。
うつ病、統合失調症などの精神疾患を救うために、「情報技術、人工知能、医療、ヘルスケアなどをうまく活用してゆく方法はあるか」との質問に対する自由回答では、ハードを活用した方法として、「人工知能搭載の介護支援ロボットの活用」や「日常生活での脈拍や交感神経の状態などを測定できるデバイス」、「ヒーリングミュージックを聴くためのコードレスイヤホン」などが挙げられた。また、ソフトを活用した方法では、「自律神経を調節してくれる音楽や呼吸法・香り」、「不眠解消やヒーリングアプリ」、「個々人に最適化されたメンタルプログラム」などが挙げられた。これらは今後の研究開発材料のヒントとして有用なものだと考えられる。(編集担当:久保田雄城)