NYの視点:米新政権の貿易政策がドル高を妨げる可能性は薄い
2017年1月4日 07:35
*07:35JST NYの視点:米新政権の貿易政策がドル高を妨げる可能性は薄い
米国のトランプ次期政権が保守的な貿易政策をとり世界的な貿易戦争につながり、米国経済の成長を損ねるとの警戒感がくすぶる。トランプ次期大統領は3日、米通商代表に対中強硬派、ライトハイザー元次席代表を指名した。次期米大統領は昨年、ホワイトハウス内に貿易政策を担当する「国家通商会議」を新設し、トップにやはり対中強硬派で知られるピーター・ナバロ・カリフォルニア大教授を起用すると発表した。大統領選の期間中もトランプ氏に助言していたナバロ氏は、中国の政策を強く批判する「中国は世界に復讐する」「中国による死」などの著者としても有名。
トランプ氏は、貿易問題を選挙運動の大きな柱に据え、中国やメキシコなどの国との貿易協定を批判。ナバロ氏は米紙への寄稿で、「トランプ氏は、自由貿易は良いことだが公正でなくてはならない、と考えている。そうでなければ、今のような状況になるわけだ。米国の製造業の基盤が大きく損なわれ、賃金上昇は15年間にわたって停滞し、まともな賃金が得られる良い仕事を見つけられない米国人が2000万人以上いる」と述べた。
トランプ次期大統領は年初早速ツィッターで、「米国自動車ゼネラルモーター(GM)社がメキシコ生産モデルを税金を支払わずに米国内に輸入した」と非難。続いて、米国自動車大手、フォードは16億ドル規模のメキシコ工場新設計画を断念したと発表している。一部メディアでは、トランプ政権移行チームが国境の壁建設で資産算定を要請したと報じられるなど、トランプ次期大統領の本気度が伺える。
ただ、トランプ次期大統領はあくまでも自由貿易を軸とし、公平な協定に向けて断固とした交渉を進めると見られ、必ずしも保護主義貿易を推進するわけではない。このため、米国経済の足かせになるとは考えにくい。かえって、停滞していた米国の製造業の復活につながり、一層の成長を後押しする可能性もある。
米供給管理協会(ISM)が発表した12月ISM製造業景況指数は54.7と、11月53.2から改善。2014年12月以降2年ぶりの高水準となり、予想53.8を上回った。4か月連続で活動の拡大と縮小の境目となる50を上回り、ドル高の再燃にもかかわらず、製造業の回復が継続している証拠となった。主要項目となる新規受注は60.2と11月53から上昇し2014年11月以降で最高。雇用も53.1と、昨年6月来で最高となった。特に、支払い価格は65.5と、前月から11ポイント急伸。2011年6月以来で最高に達するなど、インフレの兆候も見られ始めた。2017年の米国経済の成長加速やインフレの上昇で、ドルは上昇基調を維持すると見られる。《WA》