【2017年の展望】旅行にもスマホ時代到来、鍵はSNSか
2017年1月3日 22:53
旅行業界は2016年も訪日外国人の取り込みや対応で盛り上がった年になった。日本を訪れた外国人観光客数は10月末時点で約2011万3000人。2か月を残して15年の1978万人を上回った。観光地は東京、沖縄、京都、大阪などが人気ランキングの上位常連だったが、今年は北海道新幹線が延伸した函館や横浜もランクイン。インバウンドの熱は地方に派生しつつある。
日本人の海外旅行者も復調傾向だ。出国者は10月までで1416万8898人。過去最高を記録した12年(1849万人)以降は国際情勢や感染症の発生、円安などの影響で低迷していたが、4月から10月までは5か月連続で前年同月を上回っている。10月は韓国、台湾、香港、マカオ、タイ、ベトナムなどアジア各国が前年同月比増となった。特に韓国を訪れた人は22万7000人と前年同月から26.0%も増えた。定番のリゾート地・ハワイも13万5000人(同+2.7%)と4か月ぶりにプラスとなっている。
これらの傾向、果たして来年も続くのだろうか。日本旅行業協会が集計したこの年末年始の旅行についてのデータを見てみると、やはり「アジア+ハワイ」が強いことに変わりは無いようだ。海外旅行先のランキング1位は2年連続で台湾。近いことや温暖な気候、日本人に合う食事など「手軽さ」が受けているようだ。以下2位ハワイ、3位グアムの順。以下シンガポール、タイ、ベトナム、韓国、香港とアジア各国が続く。ヨーロッパはベスト10には1国も入らず、テロの影響が続いていると考えられる。パッケージツアーを主催するJTB、近畿日本ツーリスト<9726>など6社のツアー申込予約状況も、近隣のアジアやグアムに集中し、いわゆる「近場デスティネーション」が昨年比3%増になっている。特に韓国の58.6%増、ハワイの19.7%増が目立つ。国内旅行では沖縄が東京を抜いて1位になった。以下、東京、北海道、大阪と続く。
「より近くで、より手軽に」-。この傾向は来年も続きそうだ。「手軽」というのは距離や時間の問題だけではない。オンライン宿泊予約サイト Booking.comの日本法人 ブッキング・ドットコム・ジャパンが発表した17 年の旅行トレンドワードには真っ先に「インスタント・グラティフィケーション(欲しいものを即座に)」が登場する。それはつまり消費者が「欲しい」と思ったとき(=旅に出たいと思った時)にすぐ手に入る(=予約が完了する)こと意味している。実際に旅行者の44%が「旅の計画はスマートフォンを数回タップするだけで完了すること」を期待し、52%が「来年はトラベルアプリの使用頻度が上がる」と回答している。JTB総合研究所が今年行った調査でも、旅行の申込をウェブサイトで行ったとした人が前年より10%以上増加し、69.1%となっている。申込先も旅行会社が8.9%減の51.7%に縮小したのに対し、OTA(ネット専用の旅行会社)が3.6%増の12.9%となっている。
スマホと旅行。これは別の調査からも密接に関わっていることが分かっている。旅行先を選んだ理由としては「ずっと行ってみたい場所だった」(33.3%)、「好きで繰り返し行っている場所」(27.1%)などが上位に並んでいるが、15~29歳男女では「友達に行ったことを自慢できる」「SNSやブログの記事でおすすめだった」という回答が目立っているのだ。
さらにブッキング・ドットコム・ジャパンのトレンド予想には「絶景&体験スポット」がランクイン。千葉県の「濃溝の滝」が「まるでジブリの世界」とInstagramで話題になり一躍人気観光スポットになったのは記憶に新しい。今は自分の体験をSNSで共有するのがスタンダードな時代となった。旅行では「SNS映え」することがトレンドの条件になると同社はみている。周囲から羨ましがられるような絶景や「いいね」をもらえそうな面白い写真が撮れる場所が来年以降も人気を集めることになるだろう。「アジア」と「スマホ」。17年の旅行業界はこの2つを押さえる必要がありそうだ。(編集担当:久保田雄城)