【2017年展望】業界全体は売上増か、パイ奪い合うファーストフード業界
2017年1月2日 18:51
2016年はファーストフード業界にとってチャンスの年であった。業界全体としての売上は前年比4%増。増える顧客をどう取り込むか、各社で攻防戦が繰り広げられた。17年はどのように業界が動いていくのか、展望を示してみる。
まず日本マクドナルド<2702>において16年はユーザーニーズを聞き出し、品質を見直す年となった。社長が47都道府県を回り、顧客にヒアリング。品質向上に務めるとともに次々と新商品を販売した。特に年末にかけては「グラコロ」を23年ぶりにリニューアルし、クリスマス用に「チキンマックナゲット クリスマスキャンペーン」を実施。更にはハッピーセットで「妖怪ウォッチ」や「スーパー・マリオ」など人気キャラクターとコラボするなど、攻勢の手は緩めていない。また、「プチ贅沢」を謳ったスイーツ「By McSWEETS」も11月に発売。
一方でモスフードサービス<8153>も年末にかけて新商品をリリース。「オマール海老のビスク」に「とびきりハンバーグサンド<国産ベーコン&チーズ>」など、モスらしい高級感と素材へのこだわりを前面に出した商品をリリース。更に年始にかけて商品購入に使えるお年玉券とオリジナルグッツが同梱された「モスお年玉セット」を12月26日に販売開始するなど、モスバーガーも年末年始に向けて次々と施策を打っている。
ただ、こうしてみているとマクドナルドが徐々にモスバーガーの客層も取り込んでいくのではないかと考えられる。前述のように「プチ贅沢」という高級感を打ち出した商品もリリースしているし、「品質向上」を目指す施策を打ち出している。店舗のデザインも従来と比較するとラグジュアリー感が出てきた。従来は「お値打ちなマクドナルド」、「高級路線のモスバーガー」というイメージがあったが、こうした構図が徐々に変化してくことも予想される。
牛丼業界においては吉野家<9861>とゼンショーホールディングス<7550>のすき家が共にしのぎを削っているが、16年には両社ともわずかに前年を上回る業績という結果だった。
吉野家は「吉呑み」という仕事帰りのサラリーマンを取り込む戦略を、一方すき家は「黒毛和牛弁当」という高級路線を取った。いずれも客単価を上げる狙いがあると考えられる。牛丼業界では人材の確保が難しい上、人件費も高騰している現状もあり、極端に新しい食材を投入することは難しいと考えられる。
吉野家の場合は牛丼一筋と言う状態が今もなお続いていて、最近ようやくトッピングに関しては柔軟になってきたイメージがある。一方のすき家は、むしろトッピングを得意とし、牛丼以外の新メニューも考案するなど差別化を図っている。やはりキーポイントは、新商品や新規顧客層の開拓にかかっているとも言えるだろう。「吉呑み」や「黒毛和牛弁当」がどのような結果を奏すかが期待される。
回転寿司チェーンは16年、ゼンショーの傘下であるはま寿司があきんどスシロー<2781>を店舗数で破った結果となった。はま寿司の安さが顧客からの支持を集めた結果である。はま寿司が台頭したことで、業界全体として価格競争に繋がった。そこで、スシローは期間限定メニューやサイドメニューで客単価を上げる施策を打ってきた。
しかしこの流れにおいて、はま寿司はさらなる手を打ってきた。それが会計時のクレジットカード導入並びにグループ共通電子マネー・クーカの利用開始である。これは薄利多売である事と矛盾するが、クレジットカードを導入した場合、カード会社からの手数料負担が利益を圧迫することは間違いない。にもかかわらず導入と言うのは、当然利益が出ていると言うことである。また共通電子マネーの導入は、グループでの顧客の囲い込みとともに、ゼンショーグループのすき家で問題になった、労務環境の改善も含まれているのだろう。この場合、多額の設備投資が必要になるが、やはりスケールメリットで回収する計算のようだ。
一方であきんどスシローは、このまま高単価路線を維持していくかと思われるが、現在の経営母体は外資系のファンドである。当然利益の出る形となった時点で、会社の身売りも考えられる。
16年から年末年始に向けたキャンペーンや新商品のリリースなど、17年に向けた戦いはすでに始まっている。業界としては激戦となっているが、消費者の立場としては競争の中で揉まれて出来上がった商品、サービスに期待したい。(編集担当:久保田雄城)