『バクマン。』アニメ未放送回~編集者全否定!?金の力で面白い漫画を量産する方法!!~

2016年12月31日 21:01

記事提供元:アニメコラムサイト|あにぶ

 『 バクマン。 』とは、『DEATH NOTE』で有名な、大場つぐみ×小畑健による作品です。掲載雑誌は、あの『週刊少年ジャンプ』。アニメは第一期が2010年10月2日に放送され、完結編となる第三期は2013年3月30日まで放送されていました。

 真城最高と高木秋人のコンビが「亜城木夢叶」(あしろぎむと)というペンネームを名乗り、『週刊少年ジャンプ』の中で漫画を連載していく物語です。多くの個性的なキャラクターが登場し、漫画の作り方や漫画家としての苦悩なども描かれた濃い作品です。

  アニメは原作の最終巻まで放送しているのですが、実は尺の都合なのかカットされてしまったエピソードもあるんです。今回は、その中でも連載当時ネットで話題になったエピソード、『シンジツコーポレーション編』を紹介していこうと思います。

■エピソードの中心にいるのは、七峰透というキャラクター


 彼は亜城木夢叶に影響を受けて漫画家になった、主人公二人のファンでした。

 七峰透はまだ学生だった当時、亜城木夢叶の描いた「この世は金と知恵」という作品に衝撃を受けます。そして、同級生に金を渡して取り巻きを作り、世の中は金が全てという考えを持つようになります。

 その後、インターネット上で集めた50人にアイデアを出させて漫画を作る――という手法でジャンプに乗り込んできます。そして、彼のやり方をよくおもなかった亜城木夢叶と、対決をします。

 七峰透自身、作画の技術が高く話作りの才能もあります。そこに50人分の知恵が加わるので、当初は強敵扱いをされていました。けれど、名前も顔も知らない50人をまとめるのは大変ですし、ただで働かせていたこともあって、徐々に離反が起こりました。そうして、その手法は失敗に終わるのです。

 とまあ、ここまではアニメでも描かれた話です。

 カットされたのはその先――七峰透が亜城木夢叶を倒すために、よりパワーアップして帰ってくるエピソードです。

■蘇る高齢作家達


 ある日、ジャンプに「ぱんちらファイト」という作品を筆頭に、ベテラン作家達の読み切りがどんどん載り始めます。今更そんなおっさん達の漫画を載せるべきでない――と多くの者が反発します。けれど、どれこれも面白い。打ち切りを連発し戦力外通告されたばかりの作家まで、すぐさま面白い読み切りを持ってきます。

 急にこんなに作風を変えて、面白いものをもってこれるものなのか――編集部の人達は疑問に思います。

 実はこれには、ワケがありました。

■シンジツコーポレーション


  ――わかりやすく例えるなら、映画監督。

 七峰透の父はかなりの金持ちです。彼は父から金をもらい、亜城木夢叶を倒すためにある会社を設立します。その名も、「シンジツコーポレーション」。社名の由来は、彼のデビュー作である「シンジツの教室」だと思われます。

  この会社では、実力のある漫画家を四人雇っていて、漫画賞で結果を出してはいるけれどデビューには至っていない者達に講義を開いています。そして彼らは絵のうまい作家からネームの依頼を受けます。依頼を受けたら、まずその作家にはどんな作品がふさわしいのか、講師を交えて会議します。そうして決まった“方向性”にそって複数のネームを作成。再び講師を交えて協議し、高評価を得たネームをモニタールームへと回します。

  ここで重要なのは、ここが学校ではなく会社であるという点です。講義を受けているメンバーには成績がつけられ、レベルの高い講義を受けられるだけでなく、互いに競い合うような環境になっています。そこで学び、競い、漫画を描く技術を磨きつつお金を貰うのです。そう、受講料をはらうのではなく、社員として漫画を学び、給料を貰っているのです。

 関わったネームの通りやアイディアの量によって報酬が変わるというシステムもあります。故に、質の高いネームが生まれてくるのです。

 これは、“どこの誰かもわからない奴らを無償で働かせた”という前回の欠点を改善した手法です。

 モニタールームには、ジャンプの読者に近い存在――高校生が日に100人は来ています。モニタールームは漫画喫茶の形をしていて、ジュースを飲みながら好きな漫画を読むことが出来ます。それでいて、彼らはバイト感覚でお金が貰えるのです。出来上がったネームは彼らによって反応をチェックされます。読者目線での感想も確かめた上で、より質の高い原作を作り上げているわけです。

 また、モニタールームにはカメラが複数取り付けられていて、読者の細かい反応もチェックされています。

 このシステムで作られた漫画が、ジャンプのアンケートで一位、二位を獲得します。

バクマン。

画像引用元:(C)NHK

■VS亜城木夢叶


  ――どこだってヒット作はほしいんだ。引っ張りだこですよ。

 七峰透は亜城木夢叶の二人を会社に招き、ネタバラシをします。

 「これなら編集者と一対一で作るより、人気をとれる作品を創り出せる」

 七峰透は言います。

 利益を度外視した赤字覚悟の戦法です。

 「本当にこの世は金と知恵ですよね」

 そう言って、七峰透は亜城木夢叶を潰すと宣戦布告します。

 後日、亜城木夢叶の二人は担当の編集にそのことを話しました。編集を全否定したやり方ですが、心情的には認めたくないが面白い作品を創るやり方としては否定できない――と担当は言います。

 その後編集同士でも話し合いになり、こんな意見が出てきます。

 「面白ければありとも思うし、その反面そんな作り方されたら編集なんていらないじゃないか。自分で雑誌作れくらい言いたくなる」

 「勝手に描かせてればいいんだから楽じゃないですか」

 しかし、七峰透は自分の作品で亜城木夢叶を倒すべく、ベテラン作家を実験台にしていただけでした。

 目的のために努力する人間を使い捨てるようなやり方は許せない。亜城木夢叶は自分達の実力だけで描いた作品で、七峰透に挑みます。

 結果、七峰透の作品はよく出来ていても少年誌らしくないということで、アンケート勝負に破れてしまいました。

 物語としては敗北してしまった七峰透ですが、実際のところ、もし本当にこんなシステムで漫画を創ることが出来たらどうなるんでしょうか。とんでもなくお金のかかるシステムではあります。けれど、確かに面白い作品を量産することは出来るのではないでしょうか。

 あなたはこの方法、どう思いますか?

低年齢層の漫画家志望者が増加。色濃い影響を与えた「 バクマン。 」のリアル

(あにぶ編集部/星崎梓)

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