外部研究機関からスパコン利用、東北大らが遠隔セキュリティルーム運用

2016年12月23日 11:48

 東北大学と岩手医科大学が、スーパーコンピュータへ外部研究機関からのアクセスを可能にした。これは両大学が取り組んでいる東北メディカル・メガバンク計画で実現したもの。東北メディカル・メガバンク計画は、東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)と岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構とが共同で、宮城・岩手両県で15万人規模のコホート調査を実施し、多くの生体試料と情報からなる複合バイオバンクを構築している事業。バイオバンクには、調査参加者の健康調査結果及び解析情報(基本属性情報、調査票情報、生理学検査情報、検体検査情報、診療情報、MRI画像情報、ゲノム・オミックス情報等)等が、膨大な情報として蓄積されている。

 ToMMo内のスーパーコンピュータへのアクセスは、これまで東北大学と岩手医科大学との間でのみ運用されていたが、今回、セキュリティを担保した環境からVPN回線を通じて外部の研究機関である東京大学大学院医学系研究科人類遺伝学分野、及び国立成育医療研究センターに設置されたシンクライアント端末を通してもアクセスできる仕組みを整えた。

 両研究機関では、入室を生体認証で厳重に管理された部屋を設置、セキュリティルームへの入室はそれぞれの研究機関への申請を通して行う必要があるほか、そこに設けたシンクライアント端末の利用は、ToMMoのスーパーコンピュータ利用アカウントを取得することで可能となる。

 この遠隔セキュリティルームのシンクライアント端末からは、ToMMo内に設置されたスーパーコンピュータのうち、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)より支援された公開区画に割り当てられた領域へのアクセスが可能で、これまでオンサイトでのみ取扱可能だった、ゲノム情報はじめ高度な機微性のある情報が設置により遠隔地からも安全性を担保した状態で操作可能になる。

 シンクライアント端末を利用することで、東北メディカル・メガバンク計画のバイオバンク事業において、前向きに収集した大規模な基本属性情報、調査票情報、生理学検査情報、検体検査情報、診療情報、MRI画像情報、ゲノム・オミックス情報等を統合したデータベース等へアクセス可能となり、精度の高いゲノム医療実現のための解析研究を実施することが可能となるという。

 今年度中に同様の拠点を複数設置する予定で、順次10カ所程度まで拠点を増やしていく予定。また、各拠点ではより多くの研究者が利用できるような運用方針を計画していく予定である。今後は、東北メディカル・メガバンク計画由来のデータシェアを進めるだけに留まらず、スーパーコンピュータの計算能力や計算資源の共有も視野に入れ、より効率的な個別化医療実現に向けた研究の推進、及び全国のゲノム医療の基盤構築を進めていくとしている。(編集担当:慶尾六郎)

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