アルツハイマー治療への応用に期待、光の刺激で認知機能の回復へ

2016年12月22日 09:42

 世界では現在4400万人以上の認知症患者がいるとされ、日本でも460万人が認知症を抱えている。アルツハイマー病は認知症患者の60~70%を占めるといわれており、アルツハイマー病を含む認知症患者の増加が世界的な社会課題となっている。アルツハイマー病では現在、薬物療法により進行を遅らせる治療が一般的だ。ただし、副作用が強いことや治療効果がまだまだ低いことなどから、新たな治療方法の開発が切望されている。こうしたなか、MITの研究者らは、特定の周波数のLEDライトを用いて、マウスの視覚野における、アルツハイマー病の原因物質「アミロイドベータ」を減少させることに成功した。

 同研究ではまず、ガンマリズムを乱す因子を持つ「5XFAD」型のマウスを作り、ニューロンへのアミロイドベータ蓄積及び、これによる記憶障害を確認した。5XFADマウスの海馬に、40Hzの周波数のガンマ波を1時間照射したところ、脳内で発生する浮遊性のアミロイドベータが50%以上も減少。さらには40Hzの周波数のガンマ波を毎日1時間浴びせ続けたところ蓄積されたアミロイドベータも減少していき、記憶力の回復が見られた。40Hzの周波数のガンマ波照射により、免疫システムを担うミクログリアと呼ばれる脳細胞が活性化し、アミロイドベータを分解したとのこと。また、注意、知覚、記憶などの正常な脳機能には25~80Hzのガンマリズムが寄与しており、アルツハイマー病患者ではこれらが阻害されていることがわかっている。40Hzの周波数のガンマ波照射により、ガンマリズムの回復も確認されたとのこと。

 薬物療法以外のアルツハイマー病治療としては、音楽療法やアロマ療法、回想療法などといったものが研究されているが、いずれも根本的治療を目指したものではなく、症状の改善や予防的な意味合いが強い。40Hzのガンマは照射による治療法では、治療コストが安く副作用の心配もないため、アルツハイマー病患者への効果が認められれば画期的な治療法となり得る。マウスで確認された40Hzのガンマは照射による治療法は、今後、人間での臨床実験が行われる予定。(編集担当:久保田雄城)

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