トルコのロシア大使、警官に銃撃され死亡
2016年12月20日 10:00
19日、トルコの首都アンカラで、式典に出席していたアンドレイ・カルロフ露大使が、突然の銃撃を受け死亡した。犯人はその場で射殺されたが、トルコのソイル内相が語ったところによると、非番中の同国警察官であったという。その身分を示して関係者を装い、犯行現場に侵入した模様である。
ザハロワ露外務省情報局長は、事件をテロと断定した。また事件を受け、トルコのエルドアン大統領とロシアのプーチン大統領は緊急電話会談を行った。両大統領は両国の友好関係について再確認し、「このような挑発行為によってわれわれの協力関係が脅かされることはない」旨を宣言したという。
「警官による外国使節へのテロ」となれば、「大津事件」がある。1891年5月11日、日本を訪問中だったロシア皇太子(のちの皇帝ニコライ2世)が、警備にあたっていた(つまりこちらは非番ではない)日本の警官、津田三蔵に斬りつけられ、負傷したという事件である。
この事件の背景には、当時の日本国民の強い反ロシア感情があったと言われている。この時は結局色々あって戦争にはならなかったのだが、日露戦争が勃発するのはこの13年後のことである。
さて、話を戻すが、トルコでも現在、反ロシア感情が非常に高まっている。ロシアが、トルコと事実上敵対関係にあるシリアのアサド政権を支援しているからである。カルロフ大使を銃撃した犯人は、犯行直後、「アラーアクバル(神は偉大なり、という意味の、イスラム教の聖句)、シリアが安全にならない限り、お前たちも安全ではない。アレッポを、シリアを忘れるな」と叫んだという。
シリア情勢は悪化の一途を辿っている。特に、犯人が言及した「アレッポ」については解説が必要だろう。シリアのアサド政権は、シリア最大の都市であるアレッポで、虐殺を行った(または行っている)という強い疑惑をかけられているのである。
アサド政権に深く関与するロシアは現在国際的に難しい立場に立たされている。20日にはモスクワでトルコ・イラン・ロシアの3カ国外務・国防相会議が予定されているのだが、この事件はどの程度今後の国際情勢に波紋を広げることになるのだろうか。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)