エボラのゲノム変化に規則性、長崎バイオ大学がコンピュータで解析

2016年12月18日 22:13

 エボラ出血熱、インフルエンザ、中東呼吸器症候群(MERS)などの感染症はRNAゲノムを持つウイルス(RNAウイルス)が原因となって引き起こされる。重篤な感染症を引き起こすRNAウイルスはゲノムの塩基配列が変化する速度が速く、ワクチン・治療薬の継続的な開発が難しい。さらには、異食性のコウモリなどの天然宿主によって保持・拡散されることから根本的な撲滅は不可能とされており、人類にとっての脅威であり続けている。 こうしたなか、長浜バイオ大学の研究チームが実施したコンピュータでの探索により、エボラウイルスのゲノムの変化に一定の規則性と再現性が発見された。

 2014年にはエボラウイルス感染がギニアで確認された後に、隣国のリベリアやシエラレオネへと拡大しているが、これに関して約1000株のエボラウイルスゲノム配列が公開されている。これらのデータに対して長浜バイオ大学の研究チームが、ゲノム内の連続塩基の出現頻度を時系列で解析、その変化の一定の規則性および再現性を導き出した。この規則性と再現性を踏まえて、RNAウイルスの変異の傾向をある程度予測でき、次世代薬として注目されている「核酸医薬品」のような持続性の高い薬剤開発への貢献が期待される。

 

 テクノロジーを活用して感染症を撲滅する試みは、米Facebookのマーク・ザッカーバーグらが立ち上げた「チャン・ザッカーバーグ・サイエンス(CZS)」においても、心臓疾患、ガン、神経系疾患の撲滅と並んでその目的のひとつとされている。CZSが開発に力を入れるテクノロジーのなかには感染症を解析するICチップや遺伝子編集技術なども含まれている。同団体の試みは、自身も基金設立などで感染症治療・予防対策の開発に貢献してきたビル・ゲイツにも賞賛されており世界中の研究者を巻き込んで推進している。

 世界70億人のうち10億人がなんらかの感染症を患っているといわれ、エボラ出血熱やHIVなど、現在確かな対処法が存在しない感染症が拡がる危険は常にある。こうした人類の危機に備えるためにも感染症の根本的治療に関する研究の加速が望まれる。(編集担当:久保田雄城)

関連記事

最新記事