次世代型モニタリングのテスト導入、工場・製造や社会インフラ・防災で

2016年12月18日 22:08

 次世代型モニタリングとは、近年注目される IoT 関連テクノロジーを活用した遠隔監視システムで、センサーネットワークや M2M などで収集した膨大なデータを、クラウドやビッグデータなどの技術で集積し、解析・アナリティクス・AI テクノロジーなどを用いて分析・判断・評価を行う仕組みである。従来型の遠隔監視との違いは、IoT 関連テクノロジーを用いて、低コストで高利便性の機能を実現することである。例えば、製造業において時間を基準とする時間基準保全という予防保全から、状態基準保全への移行、さらに最近では故障予知・保全予測への期待が高まっている。また、高度経済成長期に急速に整備・普及が進んだ国内の社会インフラは、既に築50年が経過した施設も多く、その保全対策は喫緊の課題となっている。

 矢野経済研究所では、国内の次世代型モニタリングの可能性調査を実施した。調査期間は2016年8月~11月、調査対象分野はIT ベンダー、ユーザ企業・団体(地方自治体・公共団体、各種製造業、建設業、運輸・倉庫業、サービス業等)。調査方法は電話調査を主体に、一部弊社専門調査員による直接面談調査及び文献調査を併用した。

 次世代型モニタリングは、工場・製造及び社会インフラ・防災分野でテスト導入や実証試験が始まっており、徐々にその普及が進むとともに、建設業や運輸・倉庫業などの現場作業者向け健康管理へと適用領域が広がっていくと予測する。2020年頃までは、組立製造業や FA 機器・ロボット導入工場、プロセス製造業(プラント)などでの大手企業が主導し、2020年頃からは年商規模500~2,000億円程の中堅・準大手メーカーが普及の中心になる。さらに2030年頃からは、中小メーカー分を含めたほぼ全ての製造機器・設備で次世代型モニタリングが標準設備となり、その活用が見られると予測している。

 2020年頃までは、人命に関わるような、ないしは、社会的な影響が甚大な領域から優先的に適用されるという。そのため短期的には、防災関連(冠水や河川監視、のり面監視など)での導入が見込まれる。2020年以降になると、高速道路や直轄国道、鉄道を中心とした主要な社会インフラ(インフラ構造物)への導入が始まる。2030年前後には、地方自治体レベルの社会インフラ(インフラ構造物)への普及が進むと予測する。

 また近年、健康経営/医療経営といったコンセプトが企業に浸透しつつあり、この事も作業者の健康管理に注目が集まる要因となっている。2020年頃までには、大手ゼネコンの建設現場作業者、長距離ドライバーなどの健康管理及び安全管理に活用されてくると見ている。その後2030年頃までに、中堅規模ユーザへの浸透や、製造業や警備業、倉庫業、公共セクター(電力・ガス施設等)などでの適用業務・業種の拡大が進み、多くの作業現場において普及する見通しである。2030年頃には、現状の定期健康診断や産業医の配置、ストレスチェックの義務化といった取り組みと同様に、従業員の健康管理での標準の扱いになる可能性もあると予測している。(編集担当:慶尾六郎)

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