ピロリ菌と胃がんの関係、検査受診の医師は8割以上が除菌

2016年12月12日 11:58

 日本において胃がんで死亡する人は年間約5万人にのぼる。胃がんはピロリ菌と深く関わる疾患で日本人の胃がんの98~99%はピロリ菌が原因となることがわかっている。ピロリ菌除菌が胃がんの予防効果があることはWHO(世界保健機関)も認めているが、ピロリ菌に対しての認識については、医療職とそれ以外の人でギャップがあるのが現状だ。こうしたなか、医療職専用情報プラットフォーム運営のメドピアは、会員医師を対象に「ピロリ菌の検査と除菌」についてのアンケートを実施した。

 同調査結果によれば、医師のピロリ菌の検査受診率は49.8%。受診していない医師についても、その71.3%が今後の受診を希望しているとのこと。また、検査を受けた医師の39.0%でピロリ菌感染が確認され、そのうち86.5%でピロリ菌除菌を実施していた。

 日本人では、2人に1人がピロリ菌感染しているといわれるなか、ピロリ菌の検査や除菌の普及を推進する動きもある。全国のいくつかの自治体では中学・高校生に対するピロリ菌検査が実施されている。また、ピロリ菌除菌の健康保険適用範囲も拡がっており、従来から認められていた胃潰瘍や十二指腸潰瘍に加えて2013年2月21日からは慢性胃炎についてもピロリ菌除菌で健康保険が適用されている。民間からも予防医療普及委員会のプロジェクト「ピ」などによる啓蒙が行われており、安価な検査キットの開発などでピロリ菌の検査・除菌が身近なものになってきている。

 ピロリ菌感染は、胃がんだけでなく胃・十二指腸潰瘍や胃MALTリンパ腫などさまざまな疾患の原因にもなっている。こうした疾患を予防するためには、感染者全員でのピロリ菌除菌が推奨される。ピロリ菌除菌できなかった時代には、胃潰瘍で65%、十二指腸潰瘍では80%以上が1年以内に再発していたが、健康保険が適用になってからこれらの年間再発率は2~3%に激減している。また、胃がんの3年以内の再発率を60%抑えることもわかっている。こうしたピロリ菌の特性や除菌の効果を認識していればピロリ菌の検査・除菌は無視できないものになるだろう。

 近年、医療費抑制の目的もあり予防医療の重要性が叫ばれている。国や自治体、民間機関が、医療職では常識となっているピロリ菌のような知識の啓蒙に努めることで、検査や治療のちょっとした手間を惜しむ人が減り、疾患の減少につながると考えられる。(編集担当:久保田雄城)

関連記事

最新記事