大規模な地震遭遇の可能性に対する意識、都市間に格差が発生
2016年12月11日 22:32
野村総合研究所<4307>(NRI)は、東京特別区(23区)および政令指定都市20市において、本人所有の住宅に住む20歳以上の人を対象にインターネットによる「住宅の防災・減災意識に関する調査」を2016年9月に実施した(回答者2,755人)。
調査を通して、「大規模地震に自らが遭遇する可能性に対する住民意識に都市間格差が生じていること」、「大規模地震への遭遇可能性に対する意識が高い都市では自助行動の実施率が高いこと」、そして、「これらの結果と自治体が実施する防災行政に対する住民評価が、相互に密接に関係していること」が確認された。
まず、「あなたは近い将来、自分が大規模な地震災害に遭遇すると思いますか。」という設問に対して、「非常にそう思う」と回答した人の割合を見ると、都市間に格差が生じている。最も割合が高いのは静岡市(35.7%)で、次いで浜松市(28.7%)、熊本市(26.3%)、名古屋市(25.7%)の順となっている。これらの都市は、今年震災を経験した熊本市を除いて、いずれも政府により東海地震や東南海地震による甚大な被害が想定されている太平洋岸地域に位置している。
一方、最も割合が低いのは札幌市(6.9%)で、次いで京都市(7.4%)、広島市(7.6%)、北九州市(7.7%)となっている。これらの都市は、いずれも太平洋側から遠距離の内陸地域や日本海もしくは瀬戸内海沿岸に位置し、確率論的地震動予測地図(政府地震調査研究推進本部)において、今後30年以内に震度6強以上の揺れが発生する確率が比較的低いと予測されている地域である。
自身や家庭における自助として、「①家具類の固定」「②飲食料(3日分)と生活必需品の備蓄」「③避難場所と避難ルートの確認」「④家族間での安否確認の方法についての話し合い」「⑤防災訓練への参加」の5項目の実施有無を調査した。その上で、5項目の実施率の平均値を「自助実施率」と定義して、大規模地震への遭遇可能性に対する意識との関係を分析した。その結果、「あなたは近い将来、自分が大規模な地震災害に遭遇すると思いますか。」という設問に対して「非常にそう思う」と回答した人の割合が高い都市ほど、自助実施率が高い傾向にあることがわかった。
自治体が実施する防災行政として「①防災教育」「②リスクの見える化」「③防災対策に関する知識の普及」「④家庭の防災対策に関する市役所の相談体制」「⑤防災対策に必要となる資金援助」の5項目を、住民による評価や自身の認知度に基づき、各項目1~5点で指数化した。その上で、都市別に「項目別の指数の平均値」「5項目の平均値」を算定して「評価点」とし、自助実施率との関係を分析した。
自治体の防災行政に対する評価点が高い都市は、東日本大震災を経験した仙台市(2.8点)、大規模地震のリスクが高いとされている静岡市(2.8点)など、一方評価点が低いのは、岡山市(2.3点)、熊本市(2.3点)など。項目別に見ると、評価点が低いのは、「③防災知識の周知広報」(1.7点)、「②リスクの見える化」(2.2点)だった。さらに、自治体の防災行政に対する評価点が高い都市ほど、自助実施率が高い傾向にあることがわかった。
以上の調査結果より、自助を促進するためには、防災行政の果たす役割が重要であり、特に「リスクの見える化」とその内容理解を図る工夫が重要であるとしている。 (編集担当:慶尾六郎)