乳製品の習慣的摂取で高齢者の高血圧発症リスク低減、ヤクルトら解明
2016年12月11日 10:38
ラクトバチルス カゼイ シロタ株(L.カゼイ・シロタ株)という乳酸菌がある。これは、これまで多くのヒト臨床試験が実施され、腸内菌叢改善、感染予防およびがん再発予防などが報告されているという。また、疫学調査により、L.カゼイ・シロタ株を含む乳製品の摂取による膀胱がんおよび乳がんの発症抑制効果が報告されたが、その他の疾病に対する疫学的な予防効果は明確ではなかった。
高血圧症は世界的に広く認められる疾患だが、特に日本においては成人の人口1億人あたり4300万人が高血圧症との報告もある。一般に高血圧症自体の自覚症状はないが、虚血性心疾患、脳卒中、末梢血管疾患、視力喪失、慢性腎不全といった疾患を引き起こすことが知られており、この疾患の予防は健康の維持、増進に重要と考えられる。
今回、ヤクルト本社<2267>と東京都健康長寿医療センター研究所社会参加と地域保健研究チームの青栁 幸利専門副部長は、群馬県吾妻郡中之条町に在住の高齢者を対象に、乳酸菌L.カゼイ・シロタ株を含む乳製品の摂取頻度と高血圧発症リスクを調査した結果、L.カゼイ・シロタ株を含む乳製品の週3回以上の習慣的摂取は、高齢者の高血圧発症リスクの低下に繋がることが示唆された。
具体的には、中之条町に在住の65才から93才の高齢者352名(男性125名、女性227名、5年前までに高血圧症を発症されていないヒト)を対象に、過去5年間のL.カゼイ・シロタ株を含む乳製品の摂取頻度と高血圧発症の関係を調べた。高血圧症の判定は、安静時の収縮期血圧が140 mmHg以上および/または拡張期血圧が90 mmHg以上もしくは医師から高血圧症の診断を受けたヒト、降圧剤を処方されているヒトとした。
対象者は、栄養士によって過去5年間のL.カゼイ・シロタ株を含む乳製品の摂取頻度を聞き取り調査したのち、摂取頻度により、週3回未満摂取群(254名)と週3回以上摂取群(98名)に群分けし、過去5年間の高血圧発症率を比較した。
その結果、高血圧発症率について、L.カゼイ・シロタ株を含む乳製品、週3回以上摂取群の過去5年間の高血圧発症率は6.1%であり、週3回未満摂取群の発症率14.2%に比べ、統計学上有意に低い値だった。さらに、高血圧発症に関与すると言われている主要な交絡因子(年齢、性別、体格指数、喫煙、飲酒)を調整した多変量解析の結果、週 3 回未満摂取群と比較して、週3回以上摂取群の高血圧発症リスクは半分以下であり、有意に低い値を示した。これらのことから、L.カゼイ・シロタ株を含む乳製品を週3回以上習慣的に摂取することにより、高齢者の高血圧発症リスクの低下に繋がることが示唆されたとしている。
高齢者人口の増加に伴い、高血圧症の発症者は、近年ますます増加する傾向にあり、抗高血圧効果を有する乳酸菌やそれらを利用した食品へのニーズは高まっている。今後、L.カゼイ・シロタ株を含む乳製品が、これらのニーズに応える形で、健康の維持・増進に役立てられることが期待されるとしている。(編集担当:慶尾六郎)