世界初!乾式のオフィス製紙機発売、機密向上や環境負荷に貢献
2016年12月11日 13:54
人類の偉大な発明品の一つ「紙」。紙は記録や通信手段、あるいは文字や絵、造形などの表現手段として、紀元前から人間社会の発展を支えてきた功労者だ。
ところが、昨今の世界的な環境意識の高まりや、経済情勢の悪化によるコスト低減傾向、さらにはスマートフォンやタブレット端末など、紙の機能を代替し得る技術や製品、サービスの台頭によって、紙は以前よりも存在感を失いつつある。実際、日本をはじめとする世界の先進国では紙の消費量は減少傾向で進んでいるのが現状だ。
オフィスなどでもペーパーレス化の動きが進んでいるが、すべてを電子化しようとする動きに、実は疑問を感じているという人も少なくないのではないだろうか。
紙にはスマートさや便利さだけでは置き換えることのできない普遍的な価値がある。液晶画面で見るよりも見やすく、理解しやすく、記憶に残りやすい。そして何よりも、アナログゆえの温かさがある。
そんな中、インクジェットプリンターを始めとするプリンターや、プロジェクタ、パソコンなど情報関連機器の製造販売で知られるセイコーエプソン株式会社が、世界で初めて、使用済みの紙を原料として、文書情報を完全に抹消した上で、新たな紙を生産できる乾式のオフィス製紙機「PaperLab(ペーパーラボ)A-8000」を商品化したことで話題となっている。同製品は、「紙に新たな『価値』を与え、紙ならではの豊かなコミュニケーションを活性化させることで、紙の未来を変えるスマートサイクル事業」としてエプソンが進めているプロジェクトで、2015年12月に開発発表され、大きな注目を集めた。そしていよいよ、この12月から販売が開始される。
「PaperLab A-8000」は、エプソンが独自に新開発したドライファイバーテクノロジーの3つの技術によって、使用済みの紙から新たな紙を生みだす製紙機だ。まず、機械的衝撃で、水を使わずに使用済みの紙を細長く「繊維化」した後、結合素材「ペーパープラス」を使用して繊維を「結合」する。この時、様々な「ペーパープラス」を用いることで、白色度の向上や色付けを行うこともできるという。さらに結合した繊維は加圧して新たな紙に「成形」される。加圧時に密度や厚み、形状をコントロールすることで、様々な用途やサイズの紙を生産できる。
同技術を用いると、環境負荷を低減できることはもちろん、企業や自治体内で新たな紙を生産できるので、紙の購入量を減らすことができて経済負担も減らすことができる。使用済みの紙を投入してから、A4用紙だと1時間あたり約720枚を生産できるので、時間的な負担も少ない。また、細長い繊維に分解して情報を完全に抹消するため、機密文書などの使用済みの紙の処理の際のセキュリティー向上にも貢献する。
エレクトロニクスにも注力し、プリンターなどのロールやブレードを製造している住友理工や、化成品で知られるカネカ<4118>、長野県塩尻市役所、長野県諏訪市役所、株式会社八十二銀行などが、セキュリティーの向上やコンパクトな循環型社会の形成などを目的に、ペーパーラボプレミアムパートナーとして、すでに「PaperLab A-8000」の導入を決定している。
エネルギーだけでなく、紙も手軽に再生して使用する時代。ペーパーレスの時代といわれているが、人と紙の文化は、まだまだこれからも続きそうだ。(編集担当:藤原伊織)