中小・零細企業では暴排対策を講じていない企業が約5割も
2016年12月8日 08:44
暴力団への利益供与を禁じた「暴力団排除条例」(暴排条例)が全都道府県で施行されて、10月で丸5年を迎えた。暴排条例は暴力団の資金源を断つことが目的で、暴力団の資金獲得への寄与は社会的に許されない。
企業は、暴力団など反社会的勢力からの不当要求を排除し、一切の関係遮断を求められている。違反すると場合により社名公表を含むペナルティーを科せられ、信用失墜が避けられず経営への大きなリスクになる。こうした動きを背景に、企業側でも自社ホームページで反社会的勢力との関係遮断を宣言したり、契約書面に「暴力団排除(暴排)条項」を盛り込むなど、暴排意識が根付きつつある。
東京商工リサーチのアンケート調査では中小・零細企業で暴排対策を講じていない企業が約5割を占めたという。「警察対暴力団」から「社会(市民)対暴力団」へ意識が変わる一方、企業側の意識の遅れは深刻で、暴排意識の徹底が急務になっているとしている。
暴排条例について、「知っていたが詳細は知らない」が3,213社(構成比72.0%)と最も多く、次いで、「詳細まで知っている」が1,151社(同25.8%)、「知らない」が97社(同2.2%)と続いた。詳細な内容は別にして暴排条例を「知っている」が97.8%と、同条例が普及していることが分かった。
産業別では、詳細な内容は別にして暴排条例を「知っている」は、全産業で90%以上の認知度で、社会的な啓蒙・啓発活動の成果を反映した結果となった。なかでも、農・林・漁・鉱業、小売業、金融・保険の3産業は100%で、浸透ぶりが際立った。一方、情報通信業は96.3%、製造業と卸売業は各97.2%だったほか、建設業が98.1%、運輸業も98.6%で、業界としての浸透に課題を残す格好となった。
過去に反社会的勢力からクレーム等を「受けたことが無い」が2,430社(構成比54.5%)と最も多く、次いで「受けたことはないが、社外への相談ルートを確保している」が1,424社(同31.9%)だった。全体で「受けたことが無い」は9割近く(同86.4%)に達した。
一方、「受けたことがあり、相談した」が295社(同6.6%)、「受けたことがあるが、特に対応しなかった」が157社(同3.5%)、「受けたことがあるが、相談していない」が149社(同3.3%)だった。クレームを「受けたことがある」は約1割(601社、同13.4%)で、「対応しなかった」または「相談していない」は6.8%だった。
クレームを「受けたことがある」601社を産業別でみると、不動産業が21.6%(32社)と最も多く、次いで、小売業20.3%(44社)、建設業19.7%(151社)と続く。業種により反社会的勢力と関わりに差があると同時に、企業側へのバックアップの必要性も浮き彫りとなった。
排除対策への取り組みでは、「はい」(取り組んでいる)は2,247社(構成比50.4%)だった。産業別の構成比では金融・保険業(同85.7%)、不動産業(同75.0%)で取り組みが進む一方、製造業(同42.4%)、卸売業(同44.2%)では4割にとどまり、温度差が大きかった。
一方、「いいえ」(取り組んでいない)は1,809社(同40.6%)で、製造業(同47.3%)、卸売業(同45.1%)で、反社会的勢力の排除に向けた取り組みが遅れているとしている。(編集担当:慶尾六郎)