宮島が入島料を検討、関係者「ハードルは高い」

2016年12月8日 08:46

 広島県廿日市市が、世界遺産の厳島神社がある宮島の「入島税」を検討している。住民の高齢化に伴い税収が減少する一方で外国人を含む観光客が増えており、神社周囲の森林など遺産に指定されている島の環境・観光対策に充てる財源確保が目的。今のところ入島者から1人100円程度を直接徴収する方法が有力だ。観光施エリア有料化は珍しくないが、「入島税」は前例が少ない。反発も予想されており、市は今後導入の是非を慎重に判断していく方針だ。

 2010年に約343万人だった宮島への来島者は、12年には400万人を突破。特に外国人観光客は6万6000人ほどだった11年から3年間で約13万7000人に倍増している。一方、若者の流出など過疎化により市税収入は07年の169億円をピークに減少。14年は156億円まで落ち込んだ。さらに高齢化が進むことで社会保障費は増えていき、14年には105億円と07年のほぼ倍の金額となっている。

 これを受けて観光客からは「島の環境保全につながるのであれば」と理解を示す声もあがっている。しかし「観光地を訪れるのに税金を払うなんて」と否定的な意見も目立つ。廿日市市の担当者も「宮島はほぼ10分間隔でフェリーが運航しており、利害関係者が多い。説明や理解が大前提でハードルは高い」と話す。

 この「利害関係者」が多いことも問題を難しくしている。宮島地域の人口は今年4月時点で1682人。減少が続いているものの島内には学校や金融機関もある「生活の場」でもあるのだ。検討案では島に渡るフェリー乗り場に専用ゲートを新設、コインを入れるとバーが回り通過できる仕組みをイメージしている。そのため通勤・通学に利用する島民からも一律徴収することになる。反発は必至だろう。

 ならば「観光客向け」として宮島水族館や宮島歴史民俗資料館、厳島神社や宮島ロープウエーの利用料に上乗せすればいいのではないか-。実際その案もあがっているが、利用者が減る恐れがあるため施設側に理解を求めていく必要がある。

 世界遺産の環境保全などを目的とした利用料や新税は、他の地域でも試行錯誤が続いている。14年から導入されている富士山の「保全協力金(任意・一人1000円)」の協力率は半数程度。鹿児島県屋久島町は入島税を一時検討したが税負担の公平性などの問題をクリアできず、見送っている。廿日市市の判断が注目される。(編集担当:久保田雄城)

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