主要企業の臨床検査薬・機器事業規模、15年度は前年比6.5%増の1兆67億円

2016年12月6日 13:02

 矢野経済研究所では臨床検査薬・機器事業展開企業の事業規模調査を実施した。調査期間は2016年8月~10月、調査対象は国内の主要な臨床検査薬・機器事業展開企業40社(日本企業および海外企業日本法人)。調査方法は同社専門研究員による直接面接取材、電話取材、ならびに文献調査を併用した。

 2015年度の国内主要企業における臨床検査薬・機器事業規模(臨床検査薬・機器事業を展開する国内主要40社の事業者売上高ベース)は前年度比6.5%増の1兆67億円と推計した。臨床検査薬と臨床検査機器・関連事業別に見た場合、検査薬事業は5,898億円、検査機器・関連事業は4,169億円であった。

 また、国内向けと海外向け別に見た場合、国内向け5,364億円、海外向け4,703億円であった。国内向け事業では、生活習慣病の検査のほか、各種感染症検査の需要が認められ、微増で推移した。海外向け事業については、検査機器販売(生化学自動分析装置、血球計数装置など)を中心に進展し、また、現地企業への検査薬 OEM 供給などが好調に推移した。

 国内における臨床検査薬・機器事業規模は、高齢者人口の増加および、予防医療への国の重点施策に加え、各種感染症の流行などもあり、引き続き、微増で堅調に推移してきた。2014年度については診療報酬改定による価格下落、消費増税前の駆け込み需要の反動減などから前年度比0.6%増とやや低調であったが、2015年度の国内向け臨床検査薬・機器事業規模は、伸長ペースをもどし前年度比2.3%増となっている。

 検査項目別では、糖尿病指標のHbA1c、心不全の診断・病態把握のNT-proBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント)、細菌性敗血症鑑別診断のPCT(プロカルシトニン)、血栓症診断のDダイマーなどの検査が、堅調に推移している。また、イムノクロマト法を用いた検査ではA群β溶連菌、マイコプラズマ抗原などの迅速検査が好調で、POCT(Point of Care Testing)領域での機器、キットは引き続き伸長している。

 2016年度の国内主要企業における臨床検査薬・機器事業規模(臨床検査薬・機器事業を展開する国内主要40社の事業者売上高ベース)は、国内向けが前年度比2.2%増、海外向けは同6.7%増、あわせて同4.3%増の1兆500億円を予測している。国内向け事業では、POCT領域や糖尿病関連、がん検診関連などの検査が引き続き堅調に推移すると予測している。検査分野としては、微生物、感染症関連は、緊急性もしくは感染予防的な検査を含め安定的に推移すると見る。用途、測定精度に応じて微生物・免疫・遺伝子などの各種検査手法の使い分けがなされ、また、従来は手間がかかるとされた検査も装置の自動化・小型化などが進み、取組み易い検査になってきている。

 今後は、複数のウイルス・細菌微生物を同時に簡便に検査するマルチプレックス型遺伝子検査装置の開発・導入がなされ、病原菌等の一括的な検査が容易になると考える。これらの検査が保険診療としてどのように扱われるかなどは、新たな焦点になってきている。

 また、海外向け事業では、日本企業によるグローバル展開はより強化される方向にあり、今後も拡大基調が続くと予測した。(編集担当:慶尾六郎)

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