農業のスタイルを変えるスマート農業とは、現状と展望

2016年12月2日 09:19

 矢野経済研究所は2016年の日本国内におけるスマート農業に関して調査を実施した。2016年7月~9月にかけてスマート農業参入事業者や農業法人、関連団体などを対象に行われた。

 そもそも、スマート農業という言葉は聞きなれない人が多いかも知れない。本調査におけるスマート農業とは従来の農業技術に加えロボット技術やICT技術などの先端技術を連携させたものの事を指す。人手不足が問題となっている業界の中で超省力化や高品質化を実現する新たな農業として注目されている。先端技術を生産から販売まで取り入れることにより、高い生産性の維持、コスト削減、食や労働環境の安全も実現できると言われている。

 15年度、スマート農業の国内市場規模は97億2400万円。16年度には110億4800万円と予測されている。これが22年度になると331億8600万円にまで拡大すると現状では予測されているという。農業人口の減少と高齢化が年々進む中で、人に代わる新たな労力として先端技術が取り入れられていくということだろう。また、人員が少ない状態でも作物などの生産量増加と安定化を見込める技術も広く普及していくことが期待されているのである。

 例えばこれまでは農業従事者の経験や知識によるものが大きかった野菜などの栽培にスマート農業を取り入れれば、作物や天候、土壌の状況から最適な肥料の投入や農薬の散布などの支持を得ることができる。このような機能を使いこなせば経験が少ない若年層の従事者でも農業において安定した利益を得やすくなるだろう。また、GPS機能を使えば自動運転による無人農機を導入することができ、大規模な農地でもより少ない人員で管理することができる。

 

 このように便利な面に大きな期待が寄せられているスマート農業であるが、データストックに時間がかかること、零細の事業者には設備投資が難しいことなど問題点も浮き彫りになっている。農業センサスによれば、農業従事者は1995年から2015年の間に約半数にまで減少している。平均年齢も59.1歳から66.3歳と、大幅に上がっている。国内農業の活性化のためにも、スマート農業は問題点の解決と技術の向上が急がれる業界であるといえるだろう。(編集担当:久保田雄城)

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