心臓病による生産性損失、金額換算で年間47.5万円相当に

2016年11月29日 17:32

 サノフィは、東京大学大学院薬学系研究科・五十嵐中特任准教授と共同で、高コレステロール血症患者のLDL(悪玉)コレステロール(LDL-C)管理不徹底に起因する心臓病が個人と社会にもたらす影響について、国内の40代~60代男女1,246人を対象としたウェブアンケートおよび文献検索による調査を実施した。

 それによると、高コレステロール血症患者がひとたび心臓病を発症すると、発症前と比較して QOLは低下し、生産性損失は 9.7%、金額換算すると年間47.5万円相当増大することが明らかになった。また、心臓病を発症したことがない高コレステロール血症患者と健常人では、QOLにも労働生産性にも差が見られなかった。高コレステロール血症は自覚症状がないために、イベントを起こすまでは患者本人にとって負担が発生せず、病気の認識が浅くなりうることがあらためて確認されたという。

 また、LDL-C値が高い集団における性・年齢別の今後10年間の超過心臓病発症予測数では、男性の心臓病発症数が40歳~59歳という働き盛り年代から急激に増加することが明らかになった。加えて、心臓病を発症したことがない高コレステロール血症患者と比較して、心臓病を発症したことがある高コレステロール血症患者の中で「仕事を減らした・仕事を辞めた」と回答した人数が有意に大きいことから、心臓病の発症による経済的影響の大きさがうかがえるとしている。

 一方で、脂質異常症患者数では女性が男性の2.5倍に上り、女性にも心臓病予備軍が多いことがわかった。さらに、高コレステロール血症患者のLDL-C値に対する認識について確認したところ、心臓病を発症したことがない高コレステロール血症患者の17.4%、心臓病を発症したことがある高コレステロール血症患者でも17.6%が自分のLDL-C値を「知らない」と回答している。これらのことから、高コレステロール血症患者は心臓病予防におけるLDL-C管理の重要性に対する意識を向上させる必要があると言えるとしている。

 日本循環器学会の推計によれば、心臓病のうち心筋梗塞の患者数は年間で6 万9,219人と報告されている。また、LDL-Cの管理不徹底による心臓病の発症は年間約2.8万件と推計され、これによる社会全体の経済損失は、超過急性期医療費が年間約569.4億円、1 年あたりの生産性損失が約135.1億円で、合わせて704.5億円と試算されます。なお、早期死亡による生産性損失は約660億円に上るという。

 また、男女とも50歳を超えると高コレステロール血症が急激に増加することを考慮すると、今後、高齢化の進展に伴って心臓病の発症件数がますます増えることが危惧される。実際、団塊の世代が後期高齢者になり高齢化がピークに達する2025年までの10年間で、LDL-Cの管理不徹底による心臓病はさらに約28万件発症すると推計される。2025年までの社会全体の超過急性期医療費は5,694億円、生産性損失は1,351億円、合わせた累計損失額は7,045億円に上る。なお、早期死亡による生産性損失は約6,600億円と試算されるとしている。 (編集担当:慶尾六郎)

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