全国のオーナー企業「建設業」が最多、多くが「後継者問題」を抱える
2016年11月28日 09:09
これまでの日本経済は、主にオーナー企業によって下支えされ、繁栄を続けてきた。カリスマ性を持つオーナーによる迅速な意思決定、一族の数世代にわたる長期的な視点での経営など多数のメリットを持つオーナー企業。一方で、散見される「お家騒動」報道でみられるような、オーナーの独断による判断ミスや誤った経営方針などが取りざたされた場合、企業価値の毀損が避けられず、企業存続の致命傷となる恐れも生じてくる。また、団塊世代が70歳を迎える「2017年問題」を目前に控え、後継者問題についてもオーナー企業にとって喫緊に解決すべき課題であろう。
帝国データバンクでは、全国のオーナー企業について業種別、年商規模別、後継者の有無別などの視点から分析を行った。
業種別に見ると、「建設業」が10万2185社(構成比23.5%)で、全業種で最多。次いで「卸売業」(8万8254社、構成比20.3%)、「サービス業」(7万1618 社、同16.5%)となった。オーナー率は、「建設業」(85.9%)が最高。次いで「小売業」(83.5%)、「不動産業」(77.1%)となった。
年商規模別に見ると、「1億~10億円未満」が25万9129社(構成比59.7%)と最多。次いで「1億円未満」(12万5628社、構成比28.9%)となり、10億円未満の企業が全体の9割近くを占める。オーナー率は「1億円未満」(87.9%)が最高、次いで「1億~10億円未満」(81.2%)、10億~50億円未満(58.3%)となっており、年商規模が小さい企業ほどオーナー率が高くなっている。
地域別で見ると、「関東」が15万6110社、構成比36.0%で最多。次いで、「近畿」(7万1156社、構成比16.4%)、「中部」(6万2515社、同14.4%)と続いた。オーナー率は、「東北」が最大で79.9%でトップ。約8割がオーナー企業であることがわかった。次いで「四国」(79.8%)、「中部」(79.7%)、「中国」(78.2%)と、地方での比率が比較的高いものとなった。「関東」は社数で最多ながらも、オーナー率は75.2%と全国で最少となっている。都道府県別では、奈良(85.7%)、茨城(84.3%)、徳島(85.7%)の順で高く、最少は東京(68.9%)。
オーナー企業について後継者の有無を見ると、全体の71.2%にあたる29万 2521社が、現在、後継者未定(未詳も含む)となっていることがわかった。代表者の就任経緯別で見ると、オーナー企業のうちオーナーが「創業者」の企業は 20万1926社、構成比49.2%。そのうち、後継者が「いない」と回答した企業は14 万7763 社(構成比50.5%)で後継者不在率は73.2%となった。「同族継承」は11万4905 社、構成比 39.3%で、後継者不在率は67.9%。外部招聘や買収などのその他(後継者不在率75.2%)や内部昇格(同75.4%)と比較すると、同族経営の後継者は「いる」比率が高いことがわかった。
今回の調査で、多くが「後継者問題」を抱えていることわかった。特に65歳以上の高齢社長の企業において、過半数が後継者不在だという。後継者育成には相応の時間が必要であるため、早急な解決が望まれる。後継者について「同族」に囚われることなく、「よそ者」と呼ばれる新しい風を取り込むことも一考となるとしている。 (編集担当:慶尾六郎)