骨粗鬆症の薬物治療、現場の評価に関する調査結果から見えるもの

2016年11月25日 09:18

骨粗鬆症は、骨の形成と破壊の新陳代謝バランスが崩れることで、骨強度が低下する疾患。骨折のリスクが高まり、ぶつかったり低所から落ちたりするだけで骨折することもある。生活機能を低下させるだけでなく、生命予後にも悪影響を与えることが明らかになっている。日本骨粗鬆症学会の「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」(2015年版)によると、日本の骨粗鬆症患者数は男性300万人、女性980万人と推計されており、世界的に見れば骨粗鬆症が原因の骨折は50歳以上の女性3人に1人、男性5人に1人で発生している。患者数の増加に伴い骨粗鬆症治療薬の市場も伸びていて、調査会社の富士経済が14年に発表したレポートによると、市場規模は22年には13年に比べ47%増加の3204億円に達するとのこと。

こうしたなか、マーケティングリサーチを提供する総合企画センター大阪は、骨粗鬆症治療での薬剤処方状況や現場での薬剤の評価を明らかにすることを目的として、骨粗鬆症患者50人以上を担当し、副甲状腺ホルモン(PTH)製剤または抗体製剤を処方しているドクター30名に対してインタビュー調査を実施した。同調査結果によれば、薬物治療を行っている患者6753人においての各薬剤処方の割合は、「活性型ビタミンD3製剤」(カルシウムの吸収を助ける)が65.4%で最も高く、以下「ビスホスホネート(BP)製剤」(破骨細胞の活動を阻害)(54.8%)、「SERM」(女性ホルモンの量を調整)(21.5%)、「プラリア」(破骨細胞の分化を抑制)(17.9%)、「PTH製剤」(骨を作る細胞の働きを高める)(7.7%)の順となった。

診療科別では、整形外科で「活性型ビタミンD3製剤」が約8割(76.9%)と高い割合だったほか「BP製剤」が約半数(51.3%)となった。一方、内科・婦人科では「BP製剤」が6割強(60.9%)で最も多く、「活性型ビタミンD3 製剤」については半数以下(45.1%)となっている。各薬剤の評価についての有効性では「フォルテオ」(PTH製剤)が最も高く、続いて「テリボン」(PTH製剤)、「プラリア」の順となっている。一方、「活性型ビタミンD3製剤」と「SERM」はやや評価が低かった。安全性については「活性型ビタミンD3製剤」や「SERM」の評価が高く、「テリボン」の評価が最も低い結果となった。

近年登場した新薬で、高い有効性から急激に売上を伸ばしているPTH製剤についても現場での安全性の評価が低いものもあり、適切な薬剤投与を実証するためのこうした調査は有意義だと考える。(編集担当:久保田雄城)

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