2025年には高齢者5人に1人が認知症、治療剤は24年に15年比41.8%増へ

2016年11月25日 09:21

 富士経済は、医師の診断に基づいて処方される医療用医薬品の国内市場を2016年から2017年にかけ、7回に分けて調査している。今回は第2回目として、中枢神経領域(11品目)、認知症治療剤、多発性硬化症治療剤、疼痛治療剤(7品目)の市場を調査した。

 中枢神経領域は2016年見込が前年比2.5%増の5,779億円、2024年予測は2015年比で15.1%増の6,487億円と予測している。中枢神経領域は抗うつ剤と統合失調症治療剤の構成比が高い。抗うつ剤は2014年4月の診療報酬改定で多剤処方が減点対象となった影響を特に受けているが、主要製品の好調や「エビリファイ」(大塚製薬)の適応拡大により伸長が続いている。

 また、抗てんかん剤、抗パーキンソン病剤、アルコール依存症治療剤は、疾患啓発が進んでいることや新薬の投入により伸長し、ADHD治療剤は患者数の増加や成人への適応拡大で好調となっている。一方で、統合失調症治療剤、抗不安剤、睡眠障害治療剤は多剤処方抑制の影響を受けていることから、2016年の市場は微増が見込まれる。今後は、多剤処方抑制が強まるが、大型化が期待される開発品があることや、既存製品を中心に、抗うつ剤、統合失調症治療剤などが伸長し、市場はプラス成長が予想されるとしている。

 認知症治療剤は、NMDA受容体拮抗剤「メマリー」(第一三共)が他剤と併用できることから市場成長に貢献し、2016年は前年比3.8%増の1,497億円が見込まれる。2024年は2015年比で41.8%増の2045億円と予想している。厚生労働省の策定した「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」では、2025年には高齢者の5人に1人が認知症になると想定されている。今後は、既存製品のプロモーション強化や新製品の開発が進んでいるほか、地域かかりつけ医制度の推進で認知症の早期診断、早期治療が進み当面市場の拡大に拍車がかかるとみられるが、2021年以降は現在処方の中心となっている薬剤が相次いで特許切れとなることから減速が予想される。

 多発性硬化症治療剤は、2016年見込は2015年比4.7%増の135億円、2024年予測は2015年比34.9%増の174億円と予測している。多発性硬化症治療剤ではスフィンゴシン1-リン酸受容体調節薬「イムセラ」(田辺三菱製薬)、「ジレニア」(ノバルティス ファーマ)は経口剤という剤形で、注射剤よりも服薬性が良いことから処方が増え、市場を押し上げている。現在開発中のものは経口剤で占められていることから、服薬性が良い経口剤の構成比が高まり、注射剤の構成比は下がっていくとみられる。

 疼痛治療剤は、2016年見込が2015年比2.3%減の4,886億円、2024年予測は2015年比1.2%増の4,961億円と予想している。疼痛治療剤はNSAIDs・解熱鎮痛剤や外用消炎鎮痛剤の構成比が大きいが、ジェネリック医薬品の影響により縮小しており、2016年の市場は前年割れが見込まれる。NSAIDs・解熱鎮痛剤では「セレコックス」はアステラス製薬が今後もプロモーション活動に注力していくとみられるが、2019年に特許期限切れを迎え、ジェネリック医薬品発売の影響が予想される。一方で、「リリカ」(ファイザー)、「ドラムセット」(ヤンセンファーマ、持田製薬)などの新製品の伸びや、抗うつ剤の「サインバルタ」(日本イーライリリー)が慢性疼痛に適応拡大したことにより処方増加が予想され、市場は微増が見込まれるとしている。(編集担当:慶尾六郎)

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