米IT大手40社、トランプ次期大統領に政策要望書提出へ
2016年11月22日 09:07
Facebook、Amazon、Googleなど米IT大手40社が加盟するインターネット協会は14日、トランプ次期大統領に対して政策要望書を提出した。要望書には「インターネット業界は、開かれた、生産的な議論を期待する」との記載があり、キャンペーン期間中は対立姿勢が顕著だったシリコンバレーを中心としたIT大手の、トランプ新政権との対話に向けた最初のアクションとなる。
要望には、米IT企業の成長を抑制する規制を撤廃すべく欧州へ働きかけることやシェアリングエコノミー関連の規制緩和など、トランプ氏の掲げる国益の増大に沿った内容のものが含まれる一方、暗号化強化による個人情報保護や高度な技術を持つ移民を増やす方向での制度改革など、政府への情報開示や移民排斥といったトランプ氏の言及に対して軌道修正に迫るものも盛り込まれている。
トランプ氏は国内の労働者階級の雇用を拡大すべく法人税を35%から15%に減税する方針や、逆に中国からの輸入に対して45%の関税をかける方針を示しており、これらが実現すれば中国に製造拠点を持つグローバル企業は多大な不利益を被る。移民政策に関しては、移民就労ビザからグリーンカード発行による永住権獲得プログラムにより、海外から優秀な人材をシリコンバレーに取り込んできた経緯があるが、トランプ氏は同プログラムの廃止を言及しており、ダイバーシティ経営により成長を遂げてきた企業は戦々恐々としている。
ただし、他の発言と同様、IT企業に関連する発言についてもポピュリズムを煽る目的のものもあると考えられ、実際にどういった政策をとるのかは蓋を開けてみないとわからない。政権移行チームに、シリコンバレー唯一のトランプ氏支持者でPayPalの創業者かつFacebookの取締役のピーター・ティール氏を取り込んだことで、IT関連の政策を現状に見合った方向に軌道修正するとの見方もある。トランプ氏の考える製造業の強化に関しても、グローバルでの競争力強化を考慮すればIoT等テクノロジー抜きでは実現し得ず、トレンドに乗りつつ雇用の拡大や富の再分配を実現するような政策が求められている。
Calexit(カリフォルニア州版Brexit)といったトランプ政権に影響されないような方向性を目指す動きも見られるが、現実的にはIT企業は国の定めた規制に従わざるを得ず、投資活動や人材活用、海外展開などの企業活動に対して政策が及ぼす影響は大きい。企業側は否が応でもトランプ新政権との交渉を続けなければならず双方の動向が注目される。(編集担当:久保田雄城)