二極化するLED市場、日本メーカーの強みは価格ではなく表現力
2016年11月21日 19:31
今や、照明機器等に欠かせない存在になりつつあるLED。マーケティング&コンサルテーションの株式会社富士キメラ総研の調査によると、LEDパッケージの世界市場は2020年には、2015年比で45.7%増となる4436億個にまで拡大すると推測されている。中国産を中心とした安価な製品が攻勢を強めているものの、信頼性が高く高品質な日本製LEDに対するニーズは相変わらず高い状態が続きそうだ。
その一つ目の理由として、LEDの表現力がある。これまで、LEDの最も大きなメリットとしては、白熱灯に比べて寿命が長く、省エネであることなどが挙げられてきたが、LED自体がこれだけ一般的に普及してくると、アピールポイントとしてはインパクトに欠ける。その勝負で差をつけるとすれば、価格でしかない。
しかし、日本は価格で勝負するのではなく表現力で対抗する。LEDはフルカラーで多彩な表現が可能なため、デジタルサイネージや、アミューズメント機器など、デザイン性が求められるあらゆる分野への展開が進んでいる。日本製LEDは、表現力で重要な輝度や演色性において、諸外国の製品よりも優れているのだ。
また、二つ目の理由としては、LEDの小型化と信頼性がある。搭載している各アプリケーションの小型化、高機能化の進展とともに、LEDにもこれまで以上の表現力や、さらなる小型化、長期信頼性の実現といった市場要求が高まってきている。これらの要求にいかに柔軟に対応し、市場のニーズに応えられるか、という点においても、LED先進国といわれる日本は、他国に先んじているといえよう。
例えば、ローム株式会社が今月から量産出荷が始めたリフレクタ付き LED「MSL0402RGBU」などが良い例だ。同製品は小型化が進むウェアラブル機器やアミュー ズメント製品のドットマトリクス光源などの民生機器に向けて開発されたリフレクタ付き高輝度 3 色(赤、緑、青)LED である。同社が得意とする小型化技術を活かし、業界最小サイズとなる1.8mm x 1.6mm を 実現し、実装面積を約70%もカットすることに成功。これにより高い混色性の実現と、高密度実装による、より高精細なLED の表現が可能となっている。また、従来の銀メッキフレームとシリコン樹脂の組み合わせによるLEDでは銀が硫化してしまうことで 1年で約30%程度輝度が低下する場合があり、悪環境下でのアプリケーションの長期信頼性に課題があった。しかし同製品は基板部分に金メッキを使用することによって、硫化を防止することに成功。アプリケーションの長期信頼性を実現しているという。
今やLEDひとつとっても、「多彩な表現」、「高密度実装」、「長期信頼性」など、日本の技術で高い市場要求に応えていくことが必要であるといえよう。
ウェアラブル機器やアミューズメント製品だけでなく、今後は医療分野などでも益々LEDの担う役割は増大してくるだろう。その際に重要視されるのは価格ではなく、多彩な表現力、そして長期にわたる信頼性だ。二極化するLED市場の中、日本のメーカーには今後も安易な価格競争に惑わされることなく、技術力での勝負を貫いてほしいものだ。(編集担当:藤原伊織)