アキュラホームの独創的な中規模木造建築技術、一般住宅でも展開

2016年11月21日 19:32

 木造注文住宅を手がけるアキュラホームが今年7月に竣工した埼玉北支店オフィス棟の中大規模木造建築物(埼玉県熊谷市)の一部の技術を11月12日より一般住宅へ展開、販売を開始した。

 筆者は機会を得て、このオフィス棟を見学したことがあるのだが、洗練されたこの建物はもちろん素晴らしかったが、「シザーストラスアーチ」といわれる工法の、吹き抜けの大空間を持つ3階建てアーチ棟のインパクトも大きかった。これは広さ6m×16m、高さ9mの柱のない大空間を実現するだけでなく。2階部分を間口方向に1.5m、奥行き方向に3m、2方向への跳ね出し設計(オーバーハング)木造建築として高度な技術が取り入れられているのだ。アキュラホームは、このシザーストラスアーチによる大空間の普及を目指すとしている。ちなみに跳ね出し設計(オーバーハング)とは、下階よりも上階が張り出し、スペースが広くなるように設計されているものである。

 つまり、この跳ね出し設計によって土地を有効に活用し空間を創造することが可能になり、例えば駐車場の屋根の代わりとして活用できるだろう。また、シザーストラスアーチを導入することで、設計の自由度が高くなったり、屋根の形状の選択の幅が広がるだろう。

 そして何よりも木造建築の木の温もり。これはコンクリートや鉄骨建築では決して得られないものである。ただし、大規模建築を得意とするゼネコンや木造を得意とする工務店やハウスメーカーともに木造による中・大規模建築に関してはまだ成熟してない現状があるのも事実。

 しかしアキュラホームはこれまでの経験を生かし、構造、設計、監理、施工、技術などを最善の形でアレンジし、一般流通構造材料と住宅用木材プレカット加工技術をハイブリッドに採用することでコストを抑え、普及価格帯での建築を可能にしたという。

 このアキュラホームの画期的な取り組みだけではなく、国土交通省は建築基準の合理化、関連技術の開発・普及やニーズの増大等を背景に、中大規模の木造建築物の整備が進展しつつあるとし、関連する促進施策として、国土交通省は構造・防火もしくは生産システムの面で先導的な木造・木質化建築物の整備を支援するとしている。また林野庁でも木造建築物の構造設計ノウハウのある設計者の育成に取り組んでいる。

 そして、今年2月には国土交通省が中大規模木造建築物の一層の普及を図るために、両省庁の施策の成果の報告の場として、シンポジウムを開催しているのだ。

 このように国を挙げての支援も、木造住宅の新築を考えている人には心強いだろう。しかし、そんな周辺環境のことを考えるまでもなく、単純に、この約2m跳ね出し設計、シザーストラスアーチによる大空間は、住む人を癒し、明日への英気を養うのは間違いないだろう。(編集担当:久保田雄城)

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