医療分野のICT化に課題、8割で導入・運用予算が1000万未満
2016年11月20日 23:20
エス・エム・エスが病床数20床以上の医療機関に勤務する事務長(108人)を対象に「第4回 医療関連ICT実態調査アンケート」を実施した。同社によれば、医療関連ICTシステム導入・検討状況の調査では、「医事会計」「自院ホームページ」「画像管理」「栄養・給食管理」で半数以上が導入済みとなっていたほか、新規導入を検討しているシステムとして、「電子カルテ」「オーダリング」「看護業務支援」が上位となった。特に電子カルテに関しては導入検討率が導入率を上回っており導入意欲が高いことが明らかになった。導入済み、新規導入検討システムとして割合が低かったものには、「在宅医療連携支援」「眼科」など、そもそもサービス提供を実施していない医療機関の割合が高いものや、それ以外のものでは「手術管理支援」「経営管理」「透析管理」「物品物流管理」といったものがあり、ICT化へのニーズの低い分野が明らかになった。「地域医療連携支援」に関しては、導入済みの割合は低かったものの新規導入を検討している医療機関が導入率を上回る10.2%あり、地域包括ケアシステムの実現に向けて今後力を入れる必要性を感じている医療機関が出てきていることがうかがえる。
医療関連ICTシステムの導入・運用予算については、年間の導入予算・運用予算ともに約8割が1000万円未満との結果となっており、こうした予算の制限から、最低限必要なシステム以外での普及が進みにくい構造となっていることがわかる。こうした導入・運用コストの負担から医療のICT化の推進が進んでおらず、クラウドを活用した低廉なモデルの普及が求められている。しかし、クラウドサービスに関してはセキュリテー面・安定性での課題があるほか、カスタマイズにより異なるシステム同士の情報連携面で不安があるようだ。無料のクラウドサービスを導入する可能性については、「検討の余地あり」との回答が電子カルテで92%、地域連携支援で97%、栄養・給食管理で94%と高い導入意欲を示す一方、実際の導入で求める要件として、電子カルテで「安定性」「セキュリテーの堅固さ」「スムーズなデータ移行」「導入済みの他システムとの連携」が、栄養・給食管理で「セキュリテーの堅固さ」「院内他システムとの連携」が挙がっている。また、どちらに関しても「実績」が求められており、先駆的にシステムを導入して成果を出す医療機関の事例増加が、システム普及のためのポイントとなりそうだ。(編集担当:久保田雄城)