「国産または輸入」でもOK?原産地表示義務づけで業界はこう変わる

2016年11月20日 10:35

 国内で製造された全ての加工食品に原産地表示を義務づける表示案が消費者庁と農林水産省共催の有識者検討会で了承された。重量割合が1位の原材料の原産地を義務表示とするものだ。複数国ある場合は重量順に国名を記すことになるが、原材料が頻繁に変わる場合に対して4つの例外表示も認めた。農林水産省と消費者庁は早ければ来年夏にも食品表示基準の改正案を提出する方向だ。

 現在原産地の表示が義務化されている加工食品は、ウナギのかば焼きなど4品目と22食品群で加工食品全体の2割にも満たない。それがパンの小麦粉やおにぎりの海苔など全ての加工食品に拡大されれば食品業界には大きな影響が出るだろう。

 特に食品業界が懸念しているのが、パッケージの印刷コストだ。原料原産地表示を全加工食品で実施する印刷コストはかなりの額になる。原産地が変わるたびに作り替えることになるなら尚更だ。しかし今の景気ではその印刷コストを価格に上乗せできない。そこで認められた4つの例外表示が、「米国または中国」のような複数国表示に「輸入」表示、「輸入または国産」表示、「○○国製造」という中間加工した製造地の表示だ。たとえば煎餅の原料である米が時期により国産米と輸入米と変動する場合、1年を通して「輸入または国産」と表示して良いということだ。

 検討会では「世界には100カ国以上の国がある。複数国の表示でも無いよりは良いだろう」という意見により中間取りまとめ案が了承された。しかし「原産国を隠していると疑われる」などの反対意見も相次いだ。製造国表示についても同様で、例外表示によりうどんのパッケージに「原材料:小麦粉(国内製造)」と表示されていた場合、原材料は輸入品というパターンがほとんどになるだろう。

 日本の消費者は表示されていないと意識しないが、表示されていると意識する傾向がある。食の安全に対する意識を高めるためには効果的かもしれない。しかし「全ての加工食品」ということは砂糖や塩、でんぷんなどが重量1位の加工品にも適用されるということだ。果たしてそれが消費者にとって有益な情報になるかは疑問が残る。(編集担当:久保田雄城)

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