モノの価値は「価格」から「こだわり」、住宅に見る富裕層への商品提案
2016年11月20日 12:43
近年、日本人のライフスタイルの多様化とともに、価値観が変容しつつある。戦後の日本を支えてきた旧来の価値観、「モノの豊富さ=豊かさ」「価値=値段」という感覚は少なくなってきており、それと反比例するように、自分の「こだわり」を重視し、最優先する人が増えている。いくら高価なものでも、自分のこだわりに合わないものであれば、それに価値を感じない。逆に、自分のこだわりやライフスタイルに合致すれば値段以上の価値を感じるというわけだ。
この傾向がとくに顕著なのが「富裕層」と呼ばれる高所得の人々だ。富裕層の定義は曖昧だが、概ね年収では2000万円以上、純金融資産が1億円以上の人をさし、野村総合研究所の調査では、日本では約100万世帯がそれにあたる。
富裕層の人々は、基本的に高級品を好むものの、以前のように「値段が高いもの=良いもの」という成金的感覚は薄くなっており、自分の趣味や嗜好を満たしてくれるものが、たまたま高級品であるという形に変わりつつある。
ファッション一つをとってみても、海外高級ブランドだけでなく、趣味が合えばユニクロやノンブランドの安価な商品でも積極的に着用するようになっている。これは単にリーズナブルな商品に走っているのではなく、自分の価値感覚やこだわりにポイントを置いて選択した結果といえよう。逆に言えば、価値観にさえ合えば、これまでよりも高価な商品でも「金に糸目をつけず」購入しようとするのが、今の富裕層の考え方だ。
そんな今の富裕層には、単純に「高級感」や「ハイグレード」を打ち出しただけでは購買には結びつかない。彼らの購買意欲を喚起するためには、価値観を満足させるだけの情報をしっかりと発信し、提案することが何よりも重要になってくる。中でも、時間にもお金にもゆとりのある50~60代のシニア層は、一昔前の「余生を静かに過ごす」という消極的な感覚が少なくなっており、生涯現役として、いかに人生を楽しみ、自分のライフスタイルを確立するかということに重きを置く、積極的で前向きな生き方が目立つようになってきた。
この動きに敏感に反応しているのが、住宅業界だ。住宅業界では今、最新技術を駆使した省エネ住宅や、相続税対策を兼ねた多層階住宅など、様々なトレンドがあるが、大手住宅メーカーを中心に注目されているのが、富裕層を対象としたワンランク上の高級住宅だ。設備はもとより、顧客のこだわりや嗜好柔軟に応えるプランが人気を集めているようだ。
一例としては、パナホームが今夏新発売したプレミアムオーダーハウス「artim(アーティム)」などが挙げられる。同商品は、設計自由度の高い木造に、同社が培ってきた工業化住宅のノウハウ・技術を結集したプレミアムオーダーハウスだが、特筆すべきは一邸一邸毎に専属チームのサポート体制が設けられることにある。これにより、顧客のこだわりをしっかりと受け止め、設計者の創造力で理想のマイホームを提案できるというわけだ。さらに、「artim」のライフスタイル提案拠点として、2016年11月10日より、東京都港区北青山に「サロン青山」をグランドオープンし、新しいライフスタイルの価値提案を展開している。
「サロン青山」では、さまざまな分野で活躍するメンター(人生の指導者・助言者)を招いてのイベントを定期的に開催。ターゲット客が、イベントを通して感性に合う“体験”をすることで、「artim」が提案する住まいとくらしの価値を≪共感≫≪共有≫してもらう拠点として、また、同じ価値観を持つ客同士のコミュニティの場として幅広く活用を図っていく。イベントの開催予定は、11月26日(土)テーマ:「美味しいコーヒーの選び方」・メンター:川島良彰氏(コーヒーハンター/ミカフェート 代表)、12月17日(土)テーマ:「おばんざい幸せレシピ(仮)」・メンター:青山有紀氏(料理研究家/青家 代表)。
「artim」では、ターゲット客に、ライフスタイルの共感と住まいづくりの興味を高めてもらう「サロン青山」と、住空間の魅力を実感してもらう「コンセプトハウス駒沢」(駒沢公園ハウジングギャラリー)の機能連携により新しい価値提案を展開し、質の高い商談につなげていくことを目指していく。富裕層だけでなく、日本人は今、自分のこだわりを重視する時代に入っている。安いだけのモノや、高価でもこだわりのないものは淘汰されていくだろう。また、商品に価値やこだわりがあっても、それをうまくアピールできないと見過ごされてしまうことにもなり兼ねない。住宅商品だけでなく、これからは提案力がますます必要な社会になりそうだ。(編集担当:藤原伊織)