10月の「円安」関連倒産は5件、2カ月連続で前年同月を下回る
2016年11月15日 09:11
10月のドル円相場は、円高基調で推移するなか、27日のニューヨーク外国為替市場では1ドル=105円台まで下落した。105円台になったのは、7月29日以来約3カ月ぶり。米国経済の雇用状況の堅調さから、米国の連邦準備制度理事会の年内利上げに対する思惑が膨らみ、ドル買いが一段と広がったことが影響した。
このほか、資源エネルギー庁発表の10月24日時点のレギュラーガソリンの全国平均店頭価格は年初来高値の126円になり3週連続で上昇した。今後の各方面への波及が懸念される。
東京商工リサーチによると、2016年10月の「円安」関連倒産は5件(前年同月15件)で2カ月連続で前年同月を下回った。一方、「円高」関連倒産は2件(同1件)発生した。過去の円高時のデリバティブ取引の損失などを主な原因とするケースで、5カ月ぶりの発生になった。
円安や円高に関わらず、為替変動の大きな振れはコストアップ要因になり、中小企業の経営に与える影響が大きい。それだけに今後の為替相場の動きからは目が離せないとしている。
10の倒産事例としては、各種タオル製品卸の晃清タオル(TSR企業コード:400592380、法人番号:4180001019398 、愛知県)がある。同社は、キッチン関連繊維製品を扱う企業の子会社として、ギフト向けを中心にピーク時の売上高は約13億7,600万円を計上した。しかし、業績低迷から、親会社との資本関係を平成25年11月までに解消し、以後は自力で事業運営を行っていた。
こうしたなか、一部従業員が退職したことで計画した営業活動ができず、平成26年1月期の売上高は約5億8,800万円に下落した。利益面も採算度外視の販売から粗利段階から赤字になり、最終損益も大幅な赤字で債務超過に転落した。最近は減収傾向に外国為替での円安基調も加わり、コストアップから低調な採算性に歯止めがかからず、資金ショートを起こした。
また、カジュアルウェア販売のメイクスデザイン(TSR企業コード:297273620、法人番号:3010901018698、東京都)は、女性向け中心のカジュアルウェア専門店「ディレッタント」を経営。海外ブランドとライセンス契約し、自社企画で外注製造のカジュアルウェアを販売していた。首都圏の商業施設などに5店舗出店し、平成24年12月期は売上高約2億3,100万円をあげていた。
しかし、安価なファストファッションとの競合激化から苦戦が続いていたほか、円安に伴う仕入価格の高騰などで経営環境も悪化、26年12月期は売上高約1億9,400万円まで減少し、赤字経営から破産を申請した。
非鉄金属製品販売の藤崎金属(TSR企業コード:291048676、法人番号:6010601015167、東京都)は、昭和25年創業の老舗専門商社。アルミ材、伸銅品などを取り扱い、大手鉄鋼メーカーの指定問屋として取引実績を有していた。自動車産業向けが約75%を占めるほか医療用、電気機器、アルミ印刷版向けの構成で、ピーク時の平成19年8月期は売上高49億2,424万円をあげていた。
しかし、リーマン・ショック後は自動車関連の生産停滞から売上高が減少し、21年8月期は売上高23億7,366万円まで落ち込んだ。その後、24年8月期には売上高が37億8,320万円にまで回復したが、為替デリバティブ損が発生するなどして利益面は低調に推移。また最近は大口取引先の廃業に伴う販路の縮小などもあって経営が悪化していた。(編集担当:慶尾六郎)