輸出取引企業は3万4870社、製造・卸売業が全体の9割近く

2016年11月14日 11:36

 アメリカ大統領選挙でのトランプ氏の勝利を受け、世界経済全体の先行き不透明感が増している。日本経済も例外ではなく、円相場が短期間に乱高下を繰り返すなど、今後の企業業績への影響が懸念される。保護主義的な貿易政策を掲げるトランプ氏が勝利したことで、自動車、電機をはじめとする国内輸出企業への影響は避けられそうにない。

 帝国データバンクは、2016年11月9日時点の企業概要データベース「COSMOS2」(146万社収録)をもとに、直接、間接を含め輸出取引のある企業について、業種別、年商規模別、直近業績、都道府県別に集計した。

 それによると、海外との間で、直接または間接に輸出取引を行っていることが判明した企業は国内に3万4870社にのぼることが判明。業種別では、「製造業」(1万5348社、構成比44.0%)と「卸売業」(1万5132社、同43.4%)で全体の9割近くを占めた。

 業種細分類で見ると、自動車、電気・機械、鉄鋼関連が目立つ。年商規模別では、「1~10億円未満」が1万5581社(構成比44.7%)で最も多く、「1億円未満」(3974社、同11.4%)と合わせて全体の過半数を10億円未満の中小企業が占めた。

 直近決算および前期決算の当期純損益が判明した2万3667社について損益状況を見ると、「減益」が1万1304社(構成比47.8%)を占めており、ほぼ半数の企業が利益水準を落としていることが分かった。年商規模別では、「1億円未満」の減益比率(50.3%)が最も高く、唯一過半数を占めており、零細事業者への影響が最も懸念されるとしている。

 都道府県別に見ると、「東京都」(1万895 社、構成比31.2%)がトップとなり、全体の3割を占めた。以下、「大阪府」(5471社、構成比15.7%)、「愛知県」(2276社、同6.5%)、「神奈川県」(2122社、同6.1%)、「埼玉県」(1546社、同4.4%)などが続いた。

 9日の円相場は一時1ドル=101円台まで急伸したものの、翌10日午前中にかけて105円台の水準にまで戻すなど、パニック的な相場の動きはひとまず落ち着いた格好だ。しかし、為替相場がこのまま安定的に推移するかは予断を許さない。世界経済全体の先行き不透明感から、円高傾向に再びシフトする可能性もあるだろう。

 「米国第一主義」を掲げ、保護主義的な貿易政策を主張し続けてきたトランプ氏が今回勝利したことで、かつての日米貿易摩擦のような事態が再燃することも十分ありうる。米国市場における対日圧力が高まれば、日本の基幹産業である自動車、電機などの国内輸出企業には大きな打撃となりかねない。他方、日米貿易不均衡の是正を目指すトランプ氏主導で、米国が対日輸出圧力をさらに強めてくれば(日本にとっては米国からの輸入)、国内の輸入企業にとっては新たなビジネスチャンスを生む可能性があるのも事実だろう。

 今年6月の英国国民投票によるEU離脱決定(Brexit)などもあり、国内輸出企業を取り巻く環境は厳しさを増している。大手各社の企業業績への影響が懸念されるうえ、大企業からの受注減等を通じて、体力的な余力に乏しい中小企業への影響は深刻なものとなることも予想されるとしている。(編集担当:慶尾六郎)

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