トヨタ方針変更か?環境対応車にEV、2020年ごろの発売目指す
2016年11月12日 21:53
2016年11月8日の2016年度上期(2016年4~9月)決算発表で、トヨタ自動車取締役副社長の伊地知隆彦氏は、「中期的には燃料電池車(FCV)、電気自動車(EV)のふたつゼロエミッションのクルマに取り組む。両方の特徴をそれぞれ生かして、国や地域ごとのエネルギーの課題の解決に貢献したい」と語って記者を驚かせた。
EV市場に本格参入し、EVの量産化をトヨタが目論んでいることが公式の場で発表されたのだ。具体的には2020年ごろの発売を目指して、1回の充電で長距離走行が可能なEVを開発するという。
会見で、トヨタはパワートレーンの開発方針を具体的に説明した。短期的な方針として、これまでどおりガソリン車、ディーゼル車などの燃費向上と、二酸化炭素(CO2)や大気汚染物質の排出削減を進める。さらにHVの車種拡充をこれまで以上に推し進める。
中期計画においてPHVにも力を入れる。新型「プリウスPHV」を2016年度中に発売するのに加え、2018年には「カローラレビンPHV」を投入、その展開を加速させるという。現在、トヨタは「内燃機関とHVに相当なウエートを置いて投資している。が、時間が経るにしたがってPHVやFCV、EVへと軸足を移していく」とも。
これまでトヨタは、プラグインハイブリッド車(PHV)を含むハイブリッド車(HV)と燃料電池車(FCV)がトヨタ環境対応車両の中軸だとしてきた。しかし、世界的にEVの普及を後押しする政策が広がっていることを受け、EVの量産化をも目指すというわけだ。
トヨタは、社内にEVの企画や開発を担う組織を近々発足させる。量産に適した車種や充電池開発などの絞り込み、技術開発の方向性を決める。主力のHV「プリウス」と同サイズのセダンや、世界的に人気が高いSUVなどのEV開発を想定しているようだ。
ただ、ただし、トヨタがEV開発に乗り出すことは、環境対応車開発における方針転換ではないと強調した。世界で初めてFCV市販に漕ぎつけたトヨタが、「EVに舵を切ったわけではない」と明確に否定する。
「あくまでエコカーの本命はFCVだ。航続距離や水素の充填時間などを考えると、現在のガソリン車とほぼ同等の使い勝手を実現したFCVが、究極のエコカーだとだと明確に答えられる」が伊地知氏の弁である。
トヨタは世界初のNV初代プリウスを1997年に発表。2014年末には、遂にFCV「MIRAI」の一般販売を開始した。が、一方でEVの開発で出遅れていたのは否めない。
米カリフォルニア州がZEV(Zero Emission Vehicle)規制でEVなどの販売を促す環境規制を設け、中国もEV購入の補助制度を導入する。こうしたグローバルな環境に対応するためトヨタとしても、HVとFCVに加え、EV開発を促進する必要があると判断した。
包括的な提携関係にあるマツダもEVを商品化する方針を打ち出しており、EV開発を巡って2社が協力することもありそうだ。(編集担当:吉田恒)