慢性疲労症候群の原因究明に進展、診断に有効なバイオマーカー発見

2016年11月6日 10:33

 大阪市立大学や理化学研究所らのグループは、原因不明の疾患であり強度の疲労が半年以上の長期にわたって続く慢性疲労症候群(CFS)のバイオマーカー(診断指標)となり得る物質を特定したと発表した。同グループでは、CFS患者に特徴的な代謝物質を発見するための試験と、その結果の妥当性を確認するための試験を実施。グルコースに含まれるエネルギーを使いやすい形に変換する代謝過程の前半部分と、アンモニアを尿素に変換する代謝過程において、CFS患者で機能低下がみられることを発見した。また試験では機能低下の指標として、「ピルビン酸/イソクエン酸」、「オルニチン/シトルリン」の2種類の代謝物質比を設定し、これらの組み合わせがCFSの判別に有効な指標となり得ることを示した。

 CFSでは、風邪などをきっかけとして、それ以降強い全身倦怠感や微熱、頭痛、思考力低下といった症状が長期に続き、健全な生活が送れなくなるのが特徴。日本におけるCFS患者の数は約24万人とされているが、診断が難しく、現在のところ確実な治療法も確立されていない。CFSの原因としては、過度のストレスなどから神経系・免疫系・内分泌代謝系に変調をきたしてウイルスが再活性化、それを制御するための体のメカニズムが影響して脳や神経系が機能障害を引き起こすと考えられているが、発症の詳細なメカニズムは分かっていない。2009年には米国の研究によって、遺伝子に異常をきたし、前立腺がんを引き起こすとされるウイルスとCFSの関連が示されたが、日本においては大阪市立大学らによりこの結果が否定されている。

 今回の研究をさらに進め検証を加えることで、一般医療機関でも同バイオマーカーが活用可能となるような医療システム構築が目標とされている。また、CFS患者での機能低下部分を推測することで、患者ごとの最適な治療方針が立てられるようになることや、解明された代謝病態の治療薬が開発されることが期待されている。(編集担当:久保田雄城)

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