半導体メーカーに求められる『提案する技術』とは?変化するビジネスモデル

2016年11月1日 10:11

 電子部品の高性能化、高機能化に伴って、半導体メーカーやエレクトロニクス商社の役割が大きく変化してきている。PCをはじめ、タブレット、スマホなど、今やほとんどの人が何らかの電子端末を操る世の中だ。各社の開発者たちもしのぎを削り、エレクトロニクス業界では日進月歩で技術革新が進んでいる。どんどん高度化・複雑化する電子部品に対応するためには、電機メーカーが自社だけで開発や生産を行うのは難しくなってきているのが現状だ。

 1台のスマートフォンに内蔵されている電子部品はおよそ800個前後といわれているが、それだけの電子部品を半導体メーカーと直接交渉し、検討し、調達するとしたら、膨大な時間と労力、そしてコストがかかるだろう。しかも、定期的に新機種を発表しなければならない世界だから尚更だ。そこで、それらの業務を黒田電気やマクニカ・富士エレホールディングス、UKCホールディングスなどのエレクトロニクス商社が電機メーカーの代わりに請け負い、電子部品メーカーや半導体メーカーをマッチングすることで、加速する電子機器市場の中においても迅速に対応でき、世界のトップメーカーとの競争力も保てるというわけだ。

 しかし、同じことはエレクトロニクス商社にとっても当てはまる。つまり、進化し続ける技術と膨大な数の電子部品を把握し、管理、マネジメントを行うのは、やはり膨大な仕事量になる。ましてや、様々な機能の結晶である高度な半導体の最新、最先端の機能すべてに精通することは、専門家でも困難な作業だ。そこで昨今では、できるだけ多くの部品の製造を一社で賄えることができる電子部品メーカーの存在感が大きくなっている。半導体などを手掛ける部品メーカーが他の電子部品を含めた設計図を提供し、電機メーカーがそれに基づいて設計・生産をするという流れが強まってきているようなのだ。つまり、電子機器に搭載する部品の決定権を半導体メーカーが握りつつあるということだ。

 たとえば先般、Intelがタブレットやノートパソコン向けに「Braswell」の後継となる次世代CPU「Apollo Lake」の発売を開始したが、半導体メーカー大手のロームはこれに最適なパワーマネジメントIC「BD2670MWV」を早々に開発し、量産出荷を開始している。同製品は、Apollo Lakeが要求する全電源系統を 8mm 角の超小型1chipで供給可能にし、電源系統を個々のディスクリート部品で構成した場合と比べ、周辺部品も含めて部品点数を38%、実装面積を33%削減することに成功したという。

 ロームが新しい技術に柔軟に対応できるのは、得意とするアナログ設計技術に加え、これまでインテル社の連携を強め、プロセッサに最適な PMICを開発・提供してきた経験が生かされているのだが、同時にこれは、取引先であるエレクトロニクス商社や電機メーカーにとっても大きな魅力になるのはいうまでもない。

 PCやスマホだけでなく、自動車業界、さらには昨今話題のモノのインターネット化IoTが進めば益々、電子部品メーカーやエレクトロニクス商社にかかる比重は大きくなってくるのではないだろうか。今、半導体メーカーには、製造する技術だけではなく、提案する技術もより一層求められているのかもしれない。(編集担当:藤原伊織)

関連記事

最新記事