三陽商会、7ブランド撤退、希望退職250人募集、新改革プロジェクト
2016年10月31日 22:18
三陽商会(東京、杉浦昌彦社長)はきょう28日、「構造改革と新経営計画の目指す方向性」を示し、既存7ブランドの中止や希望退職者250人の募集、売り場170拠点の削減などを発表した。若手リーダーも取り込んだ改革プロジェクト「サンヨー・イノベーション・プロジェクト(SANYO INNOVATION PROJECT)」を立ち上げ、「筋肉質な経営体制への構造改革を行うとともに、地に足の着いた新たな成長戦略を軸にした事業成長を目指す」(杉浦社長)という。
同社はこの日、2016年12月期第3四半期(2016年1~9月)決算を発表。直近の業績や株価の落ち込みを受け、「通期も大きく落ち込む見込み。当社の実力を示していると真摯に受け止めている」(杉浦社長)とした上で、“当社の実力に見合う水準までの人員削減”“低収益・低成長ブランド&売り場の撤退”“保有資産の圧縮”を課題とする構造改革や新経営計画の方向性を示した。新プロジェクトは、杉浦社長を委員長とする経営改革委員会を中心に、若手リーダ―や現場社員による、業務改革・営業販売・MD改革・既存事業・新規事業・ECを軸とした6つのワーキンググループや、構造改革や成長戦略のための分科会を設置。外部アドバイザーも含めた「閉塞感のないオープンな議論」を目指す。
すでに、全従業員の約2割にあたる希望退職250人の募集(2016年度)や既存5ブランドの撤退(2017年2月)をはじめ、棚卸資産の圧縮(2016年6月末までに行った28億円の引き当て計上)、保有株式46億円売却、役員報酬の一部削減(最大15%)・返上(2016年7月~)に着手。2017年8月には、さらに不採算2ブランドの追加撤退、不採算売り場170拠点の削減、販売人員の効率改善を行う。「プリングル 1815」レディスと「ビアンカ・エポカ」など今春夏の閉鎖ブランドを含め45億円のコスト改善を見込んでいる。保有株式の追加売却や、遊休資産の追加売却に加え、計画していた本社新別館ビル建設も一時凍結し、50億円の資産を確保する。
2017年2月に撤退するのは、2013春に開始したゴルフウエア「ポール・スチュアート スポーツ」、婦人エレガントカジュアル「バンベール(VINVERT)」(Lサイズを含む2ブランド)、紳士イタリアンコンテンポラリー「アレグリ(allegri)」、スーツを核にしたドレスウエア「フランコ・プリンツィバァリー(FRANCO PRINZIVALLI)」の5ブランド。
同社はバーバリーのライセンス事業終了を受け、2014年に発表した「中期5カ年経営計画」を発表。2017年度の黒字化、2018年度の売上高1,300億円などを掲げていたが、後継ブランドとして立ち上げた「マッキントッシュ ロンドン」「ブルー/ブラックレーベル・クレストブリッジ」の売り上げ苦戦などを受け、2016年度中間決算(1~6月)発表時に同計画を撤回していた。
■“良いものを通れば売れる”メーカー気質も障壁に
杉浦社長は、「消費構造の変化に伴う主販路である百貨店チャネルの縮小や、主力領域の中価格衣料品市場の縮小など、足元マーケットへの対応力低下が成長の足かせになっていた。“良いものを通れば売れる”というメーカー気質も障壁になっていた」と振り返るとともに、「主力領域であるアパレル、主販路である百貨店チャネルを維持しつつ、ファッションビルやECなど百貨店以外の販売チャネルへの対応を強化する。(100年コートなど)コーポレートブランドの強化も併せ、“三陽商会は変わった”と感じてもらえる改革を目指したい」と話した。構造改革とともにきょう発表する予定だった2017年を起点とした新経営計画は、来年2月に改めて発表する予定だ。
同日発表した2016年12月期第3四半期(2016年1~9月)の連結決算は、売上高が前期比35%減の478億7,500万円、営業損益83億400万円、経常損益82億7,400万円、純損益81億7,500万円だった。2015春夏にバーバリーブランドのライセンス事業を終了したことや、バーバリー後継ブランドや、百貨店ボリュームゾーンにおける販売ブランドの販売不振が響いた。重衣料のウェイトが高まる店頭売り上げの推定が難しいため、通期業績予想の修正は行わないという。
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