大学発ベンチャーが好調、日本をイノベーション

2016年10月31日 09:15

 日本経済が持続的な発展を遂げるためには、継続した技術革新、いわゆるイノベーションの創出が不可欠である。その一つの手段として注目されているのが大学発ベンチャーだ。

 経済産業省の調査によると、2015年現在の大学発ベンチャーは1773社で、前年比1.3%の微増ながら、黒字率は55.6%で、2014年調査の43.1%と比較して12.5%増加している。これは極めて有数な数字といえよう。実際、東証マザーズに上場する時価総額の上位10社の半数が大学発の技術系ベンチャーが占めていることがブルームバーグの調査で明らかになっている。大学発ベンチャー企業に投資する民間のベンチャーファンドや産学連携も増加し続けている状況だ。

 昨年12月には、慶応大学と野村ホールディングス が、共同でベンチャーキャピタル「慶応イノベーション・イニシアティブ(KII)」を立ち上げているが、今年8月には資金総額を当初計画より50%増加の150億円規模に拡大すると発表している。これは取りも直さず、大学発ベンチャーの成功に寄せる期待の高さと、イノベーションがもたらす投資ニーズの拡大を反映していると窺える。

 大学発ベンチャーの成功例として有名なのは、大学発ベンチャー創出数トップを誇る東京大学のユーグレナではないだろうか。同社は藻類の一種であるミドリムシを中心とした微細藻類に関する研究開発及び生産管理、品質管理、販売等を展開しており、ミドリムシを用いた機能性食品やバイオ燃料などで一躍有名になった。

 2015年12月には、国内生産・国内調達原料を用いて国内実証プラントでバイオ燃料を製造し、2020年迄にバイオジェット・ディーゼル燃料の実用化を目指す「国産バイオ燃料計画」を発表、横浜市及びANAホールディングス、伊藤忠エネクス、いすゞ自動車、チヨダコーポレーションの1市4社の協力のもとで開始している。

 大学発ベンチャーのメリットとしてはまず、専門分野に特化した指導教諭や学生など、研究開発に必要な優秀な人材が揃っていることが挙げられる。また、研究開発の初期費用がかからないという点も大きいだろう。そして、企業の研究開発部門のようにコスト面で比較的自由なので、萎縮せずに先端的な研究開発に専念できることも大きい。

 これらのメリットは大学発ベンチャーだけでなく、専門の研究者なども同様だ。最近では、企業の経営やコンセプトなどに合致する研究者や研究グループを助成して、共同で研究を展開している企業も増えている。

 例を挙げると、ローヤルゼリーやプロポリスなど、ミツバチ産品の製造販売で知られる山田養蜂場が行っている「みつばち研究助成基金」がある。同基金は山田養蜂場が創業60周年を機に、ミツバチ研究および予防医学的研究の発展や若手研究者の支援を目的として2008年に設立されたもので、これまで、「悪性腫瘍や生活習慣病に対するブラジル産プロポリスの作用と活性成分の同定」(2013年度採択・愛知学院大学 薬学部 中島健一助教)や、「酵素分解をした蜂の子が、耳鳴りに伴う不安や苦痛を和らげるとともに聴力を回復させる働きを持つこと」(2009年度採択・岐阜大学医学部附属病院 青木光広臨床准教授)を明らかにするなどの多岐にわたる成果を数多くあげている。2016年度も北海道大学の井上馨教授による「疾患モデル動物を用いた緑内障予防食品としてのプロポリスの効果研究」などをはじめ、うつ病・記憶障害予防、ロコモティブ症候群予防など健康寿命を延ばすための研究16件の助成を決定している。

 今や世界を席捲しているGoogleやFacebookなども、もとは大学発のベンチャー企業だ。

 これから日本でも大学と企業の連携によって、様々な発見やイノベーションが創出されることだろう。世界をあっといわせるような研究や技術は、すでに生まれているかもしれない。(編集担当:藤原伊織)

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