高額がん治療薬「オプジーボ」が財政圧迫 大幅値下げ踏み切れない理由
2016年10月24日 07:50
厚生労働省は、超高額がん治療薬「オプジーボ」を2017年度に最大25%引き下げる方針を示したが、14日開かれた政府の経済財政諮問会議では有識者らの民間議員がさらなる引き下げを求めた。
オプジーボは、欧米では日本の約3分の1から5分の1の価格で販売されている。民間議員はそれを踏まえて「50%以上の引き下げが必要」「大胆に引き下げるべき」と主張。安倍首相は対応策を具体化した上で歳出改革の加速を求めた。
オプジーボは一部の皮膚がんの治療薬として14年に販売され、当初は想定患者数が年間470人と少なかったため、開発費を回収する目的で100ミリグラム約73万円という超高額な薬価が設定された。ところが、その後は患者数の多い肺がんなどにも適用が拡大し、16年度には15,000人の利用が想定されている。
これを受けて厚労省は、原則2年に1回で次回は18年度に実施予定の薬価改定のタイミングではなく、17年度に臨時で引き下げる方針を示した。
オプジーボは医療財政を圧迫する要因になると懸念されている。医療費は一部の自己負担と保険料や公費で負担されており、高額な医療費については患者の負担を軽減するために「高額療養費制度」が設けられている。高額な薬が増えるとそれだけ国の財政を圧迫することになるのだ。医学が進歩し、高額な薬が相次いで開発されているため、薬価の見直しが追い付いていないとの指摘もある。
医療費や年金、福祉、介護などを含む国の社会保障費は、今年度当初予算で31兆9,700億円。予算の中で最大の歳出項目であり、団塊の世代がすべて後期高齢者になる25年には医療費や介護費が急激に増加するとされる中、政府は高齢化に伴う社会保障費の膨らみを今年度から3年間で1兆5,000億円に抑えたいとしている。財務省はオプジーポの引き下げ以外にも、社会保障費の歳出抑制に向けた改革案を提示している。
オプジーボの引き下げについては改定の根拠となる薬価調査を実施していないため、厚労省は強引な薬価引き下げによる企業からの訴訟リスクを懸念し、25%より抑えたい意向を示しているが、財務省などは歳出効率化を進めたいようだ。課題が山積みの中でどのように折り合いをつけていくのか注目したい。(編集担当:久保田雄城)