世界的な船余りで低迷する造船業界 川重、三菱重工の再起は
2016年10月23日 22:12
日本船舶輸出組合の発表によると、1月から8月分の受注量にあたる輸出船契約実績は前年同期比で8割減少した。造船業界は世界的な“船余り”で受注が振るわず、大手を含む各社が苦戦を強いられている。
川崎重工業<7012>は、今年4月から9月期の連結最終損益が50億円の赤字になる見通し。前年同期は268億円の黒字であった。145億円の黒字見通しから7年ぶりの赤字となり、17年3月期通期見通しも引き下げを余儀なくされた。円高が想定以上であったことや、船舶海洋事業の不採算案件が響いたようだ。
9月30日、川崎重工は「構造改革会議」を設け、不振続きの船舶海洋事業の存廃を含めて方針を検討すると発表した。今年度末を目途に方針を打ち出し、改革に動き出す。国内では神戸工場と香川県の坂出工場で造船事業を展開しているが、撤退や再編なども検討するという。これまでに三井造船<7003>との経営統合を模索したことがあったが13年に破談となっている。
一方、三菱重工業<7011>は大型船事業から撤退する方針であることを今月18日に発表した。米クルーズ船大手から2隻の豪華客船を受注したが、納期が遅れたことにより計2,375億円の巨額損失を計上していた。4月に設立した「事業評価委員会」は、中国市場の拡大で大型客船の需要が続いているものの将来的に建造能力の面で余剰が生じるとし、コストについても欧州メーカーに対して不利な点を指摘した。
今後、三菱重工は中小型の客船に絞り込み、8月に商船事業で提携した国内造船最大手の今治造船、大島造船、名村造船所<7014>との連携を強化するという。設計などを担当する部門を分社化して3社と合流させ、造船所の共同利用や船の種類によって使い分けることも検討していく。
日本郵船<9101>は「飛鳥2」の後継の建造を検討しているが、三菱重工の宮永俊一社長は「思い入れがある。対応可能か詰めたい」と前向きな姿勢を示した。
日本の造船の歴史は古い。高度経済成長期には「日本のお家芸」とまで言われた造船業だが、15年の世界シェアは1位が中国(40%)で、日本は2位(30%)と、かつての勢いを失っている。日本が世界一の造船大国として返り咲く日は訪れるだろうか。(編集担当:久保田雄城)