「健康格差」は所得だけの問題ではない、雇用形態も要因に

2016年10月22日 08:48

 日本は格差が小さいと言われていたが、「健康格差」の問題が浮上している。「2014年国民健康・栄養調査」によると、世帯所得が600万円未満である中・低所得者層と600万円以上の高所得者層では、前者の食事が主食(穀類)に偏っており、乳類や野菜の摂取量が少ないなど、栄養素のバランスが悪い傾向にある。さらに、山口大学医学部などが実施した調査によると、家計支出の少ない女性は肥満や高血圧、糖尿病、脂質異常症の割合が高くなる傾向があり、女性の方が家計支出による生活への影響が大きいとの見方もある。

 また、雇用形態も健康格差を招く要因であると言われている。10月から健康保険の加入対象が拡がったが、対象は従業員501人以上の事務所などに限定され、雇用実態に合わせた制度を求める声があがっている。

 厚生労働省が14年にパート労働者13,417人と5,065の事業所を対象に調査したところ、定期健康診断を受診したと回答した労働者は従業員49人以下の事業所で57.9%、300人以上の事業所で82.2%であった。パートの健康管理規定についても「ある」と回答したのは49人以下の事業所で53.1%、300人以上の事業所で74.4%と、事業所の規模が小さいほど低いという結果になった。

 非正規雇用の健康管理は形態ごとに異なる。パートの場合は労働時間が少ないと健康診断の対象外となり、掛け持ちで働いていたとしても把握されにくいのが現状だ。派遣労働については、派遣元と派遣先とで労働安全衛生法上、健康診断の種類によって実施責任の所在が違ってくる。

 非正規労働者は1994年から緩やかに増加し、近年では非正規労働者の中でも65歳以上の割合が高まっている。非正規労働者は正規労働者に比べて賃金が低いこともあり、健康格差が広がる一方だ。環境やライフスタイル、保健医療の違いによって健康状態の差が生じるわけだが、それらは社会的・経済的な要因に大きく左右される。他者からの社会的・精神的なサポートがなければ問題を解決するのは難しいだろう。(編集担当:久保田雄城)

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