宅配ボックス設置で再配達が招く社会的損失を解消できるか
2016年10月22日 11:02
パナソニック<6572>は、一戸建て用宅配ボックス「COMBO」を設置する実証実験を11月にスタートする。対象は福井県あわら市在住の共働き世帯100世帯。留守中でも荷物を受け取れるようにすることで、再配達削減を狙う。
同市は「働く世帯応援プロジェクト」を推進し、「宅配便の再配達がない町を目指す」とした。実施期間中の再配達状況を調べ、中間発表を2017年1月中旬に、最終結果を4月中旬に発表する予定。
COMBOには伝票を入れる差込口があり、「なつ印ボタン」を押して押印した伝票を取り出すことで荷物の受け入れが完了する。荷物を取り出す時は専用の鍵を使うため、配達時間を気にせずに家を空けることができる。
15年9月、国土交通省は再配達の削減に向けて、荷物を受け取る方法の多様化を提言している。16年1月にはヤマト運輸<9064>と仏企業が設立した合弁会社が宅配ロッカーの普及を進め、日本郵便<6178>は駅やコンビニに宅配ロッカー「はこぽす」を設置している。
国土交通省が15年8月に発表した「宅配の再配達の発生による社会的損失の試算について」では、全訪問回数に対する不在時訪問回数の割合は19.1%で、宅配便配達の走行距離のうち再配達が占める割合は25%と分析されている。
また、再配達の伸長率からCO2排出量の増加を算出すると、年間418,271t-CO2が発生したと考えられるという。年間CO2吸収量はスギの木約1億7,400万本、面積でいうと山手線の内側2.5個分の広さのスギ林に相当する。労働生産性への影響も大きく、年間約1.8億時間が不在配達に費やされ、年間9万人の労働力に相当すると算出した。
近年では電子商取引の大幅な拡大に伴い、宅配便取扱件数が急増。再配達による社会的損失が問題になっている。国土交通省は具体策として、WEBやアプリを活用して日時指定方法をより簡単にすることや、再配達削減に貢献した受取人へのメリットの付与などをあげている。再配達を削減するためには、関係事業者の連携と工夫、そして国民一人一人の協力が不可欠だ。(編集担当:久保田雄城)