世界標準のトレードツールを日本の投資家に!【松本大氏インタビュー(前編)】~雑誌「トレードステーション入門」より
2016年10月13日 16:00
*16:00JST 世界標準のトレードツールを日本の投資家に!【松本大氏インタビュー(前編)】~雑誌「トレードステーション入門」より
トレードステーションとは、米国のTradeStation Groupが開発した高機能トレーディングツールで、米国ではその先進性、機能性において数々の最高評価を受けてきた。日本ではマネックス証券がその日本版を開発。先ごろより提供を開始しており、日本の株式投資にも自動売買・システムトレードの時代を切り開く存在として注目を集めている。
マネックス証券がなぜ「トレードステーション」の提供を始めたのか。投資家にはどんなメリットがあるのか。代表取締役会長CEOの松本大氏への特別インタビューを、前・後編の2回に分けて掲載する企画の第1回。
日本人は元来、運用上手
それは史実が証明している
——日本では株式などリスク資産で資産運用をする人がなかなか増えないと言われますが、日本の個人投資家の現状をどのように感じていますか。
松本 元来、日本の個人は資産運用が大変上手だと私は思っています。バブルの崩壊時にも、家計部門は不動産を売り越しています。そのお金で株も外貨も買わず、当時6%で回っていた円建て定期預貯金や債券を買っているのです。その後、株は売られ、円高になり、金利は下がりました。結果的に、日本の個人は最もリターンのいい資産にタイミングよくお金を移したことになります。
日本の個人は投資をしないと言われてきました。預貯金ばかりで株式投資をしない、金融リタラシーが低いと言われてきたのですが、このような史実を見ると、それは明らかな間違いであることが分かりますよね。日本の個人はとても資産運用が上手なのです。この人たちをして、金融リタラシーが低いというのは、明らかに大きな間違いだと私は思います。
この10数年間、日本の個人が株式投資をあまりしてこなかったのは、単にデフレ時期にあったからだと考えます。それがアベノミクスにより風景が変わり始めたので、株式型資産で資産運用をする人が最近また増え始めています。それは、当然のことだと思います。
これから国策としてデフレからの完全脱却を目指していけば、日本の個人による投資行動も、徐々に活発になっていくと考えています。
株式や債券で資産を運用していくことは、欧米では当たり前で、多くの個人が実践しています。日本も少しずつ近づいていくのではないでしょうか。
世界レベルのサービスを
日本の個人投資家に提供
——トレードステーションを導入することになった経緯、想いについて教えてください。
松本 資産運用の舞台となる金融市場はグローバルに開けています。ですから、私たちもグローバルに展開して、お客様がグローバルな市場へアクセスする方法をご提供したいと考えています。そのためには、グローバルな市場からサービスやアイデアを輸入して、お客様に提供しなければ、一流のサービスは作れないと考えました。そして5年前、当時のアメリカで上場していた大手オンライン証券のTradeStation社を買収したのです。
トレーディングツールとしてのTradeStationは、世界最大の金融市場であるアメリカ市場のアクティブ・トレーダーから最高の評価を得ています。トレーディング技術・ノウハウは世界共通ですから、このTradeStationを日本株の取引にも対応させ、日本のお客様に提供出来れば、日本のお客様に世界レベルのサービスを提供できると考えました。
私自身、アメリカの投資銀行でプロのトレーダーとして結果を残し、自らのキャリアをつくりました。その経験からも世界レベルの分析ツールやトレーディングツールを日本のお客様に提供することには、強い想いがありました。なんとしてでも実現したいと考えていたのです。
自動売買はトレーディングの
最大の敵を排除してくれる
——トレードステーションには自動売買機能が搭載されていますが、自動売買にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
松本 トレーダーは、感情に負けてしまいます。これは、ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン氏らのプロスペクト理論(行動経済学)で明らかにされています。トレードで成果を残すためには、感情に流されずにポジション管理、リスク管理、売買ができることが肝要です。
しかし、それは「言うは易し」で、簡単には実践できません。プロのトレーダーは、上司がいるので感情を超えて管理されています。個人はそうはいきません。そのような中で、自動売買プログラムは、予めトレーディングの計画を立て、感情による行動を排除することが出来るので、大きなメリットがあると考えています。
さらに、トレーダーは多くの情報を処理して取引を行わなければいけません。その手助けができるのも大きなメリットです。自動売買プログラムの助けを借りることで、取引タイミングを逃さずに済むでしょう。
自動売買プログラムで重要なのは、検証とチューニングです。それを何度も重ねて素晴らしい戦略を構築したり、市場環境の変化に応じて修正を加えていく必要があります。そういったトレーダーの努力があって初めて自動売買プログラムが活きてくるとも言えるでしょう。
——トレードステーションの特徴を教えてください。
松本 トレードステーションでは、膨大なマーケットデータに対して、トレード戦略のバックテスト検証ができることが最大の特徴で、トレーダーにとって大きなメリットとなるでしょう。トレードステーションは、トレードの世界ではデファクトスタンダード(事実上の標準)であり、私自身、最高のツールだと確信しています。
このところのITの進化により、さまざまな市場の情報をリアルタイムに取得してスピーディに投資判断を下せる環境は整ってきていますが、トレードステーションはこと分析力においては、自信が持てるツールです。
また、自分自身の取引スタイルにあった形のトレーディングを可能にする機能が豊富にある点にも注目いただきたいです。従来のトレーディングツールであれば、マニュアルどおりの使い方しかできないのが基本です。しかし、トレードステーションは自分でオリジナルの分析指標(インジケータ)を作成できるのです。
注文執行速度についても、板乗りや約定の返りについて相当な高速化を実現しているとユーザーから声をいただいています。デイトレーダーにもメリットを感じていただけるはずだと実感しています。
後編につづく(10月20日配信予定)
(松本大/マネックス証券代表取締役会長CEO)
※本稿は実業之日本社より刊行されているムック『株式投資自動売買で儲ける システムトレード「トレードステーション入門」』からの抜粋(一部修正)です。記事の全編は、現在発売中の『株式投資自動売買で儲ける システムトレード「トレードステーション入門」』をご覧ください。《FA》