「介護離職ゼロ」の実現に向けた国と企業の取り組み
2016年10月6日 07:12
「介護離職ゼロ」に向けて、国と企業が動き始めている。厚生労働省は「地域包括支援センター」に対して土日や祝日も開くように促し、人件費などを支援するために自治体への交付金上限の緩和も検討するという。
地域包括支援センターとは、自治体が設けている介護の総合相談窓口で、保健師や社会福祉士、主任ケアマネジャーらが配置されている。介護、福祉、健康、医療など、高齢者とその家族の悩みや相談を解決すべく、適切な機関と連携してサポートする役割がある。
全市町村が地域包括支援センターを設けているが、原則として平日のみの対応であるため、働きながら介護をする人への対応が十分でないという課題があった。介護を理由に離職する人は年間で約10万人に上り、2012年に行った厚労省の調査によると、介護離職者の約2割が「介護についての相談者がいなかった」と回答したという。
一方、企業側も介護離職の問題を重く受け止めているようだ。JFEホールディングス<5411>は介護休業を最大2年半から3年に延長することを決め、三井物産<8031>は1時間単位の有給休暇と残業時間帯に自宅で勤務できる制度を4月に導入。三菱電機<6503>は介護短期勤務制度を拡充し、ライオン<4912>は介護休職期間を93日から365日に延長すると同時に複数回に分けて取得できるように変更した。
そして今年9月には、みずほフィナンシャルグループ<8411>が、社員が取得できる介護休業の期間を1年から2年に延長する方針を固めた。休業中の手当については、賃金の一定割合を支給することになりそうだ。将来の介護のために最大240日間の有給休暇を積み立てられる制度も設けるという。
みずほ銀行では社員の4割が40~54歳で、「親の介護」が経営課題として浮上しているのが現状だ。介護離職者は年間数十人いると言い、3年後にはゼロを目指すとした。
介護離職は企業の存亡を揺るがす問題であり、ゼロに向けた具体的な対策が急務だ。「ニッポン1億総活躍プラン」では、介護離職ゼロを20年代初頭までに目指すというが、まだまだ道は険しそうだ。(編集担当:久保田雄城)