地熱発電に前進の兆し 温泉地に広がる「バイナリー方式」とは
2016年10月5日 07:46
地熱発電とは、主に火山活動による地熱を用いた発電方法である。再生可能エネルギーの1つで、太陽の核融合エネルギーを由来としない。石油やウランといった枯渇性エネルギーの高騰と地球温暖化の有効な対策として、世界で拡大しつつある。
九州では温泉地で「地熱バイナリー発電所」の建設が相次いでいる。1つは「山川バイナリー発電所」。1995年に運転を開始した地熱発電所である「山川発電所(鹿児島県指宿市)」の構内に建設し、2018年2月の運転開始を目指しているという。九州電力<9508>が熱水を供給、グループ会社の九電みらいエナジーが発電所の建設と運営にあたる。
従来の地熱発電は、地下から湧き出る熱水と蒸気を分離し、高温の蒸気でタービンを回して発電するという仕組みで、熱水は地下に還元していた。バイナリー方式は分離した熱水をさらに低温の蒸気と熱水に分け、発電用の媒体を蒸発させる熱として使うことができる。九州電力は山川発電所構内にて、13年から2年の歳月をかけて小規模の地熱バイナリー発電設備を使った実証実験を行っていた。
もう1つは「滝上発電所(大分県玖珠郡)」。出光グループ<5019>がバイナリー発電所の建設を進め、17年3月の運転開始を予定している。
地熱発電のメリットは、他の再生可能エネルギーよりも発電コストが低く、設備利用率が約8割と格段に高いことが挙げられる。C02の排出量はほぼゼロだ。さらに、日本は2,347万kWという世界第3位の地熱資源を有している。
ところが、地熱資源量第1位のアメリカ(3,000万kw)の地熱発電設備容量が345万kW、第2位のインドネシア(2,779万kW)が134万kWであるのに対し、日本は14年ベースで52万kWと成長が止まっている。
デメリットは開発期間が長く、騒音や周辺の動植物への影響などを考慮する必要があると指摘されている。
地熱発電は太陽光などと比べて認知度は低いが、電力自由化も相まって電力への関心が高まっている今、地熱発電の地位が変わりつつあるのかもしれない。(編集担当:久保田雄城)