「医師偏在」の今 指標導入で崩壊食い止められるか
2016年10月2日 21:05
厚生労働省は、医師の過不足を地域比較できる指標を導入するとした。「医師偏在」の実態を把握し、有効対策の検討に活用するという。早くて2018年度の導入になるとのこと。
指標は各地域の医師数と患者数を基本とし、地域の事情を加味して「地域の面積」「離島や山間地の有無」「特定の診療科だけを設ける病院の有無」などから算出する。都道府県が生活圏ごとに計算して医師の過不足を把握でき、都道府県や診療科ごとにもそれぞれ算出できるようにする。
過不足が明確になれば、地元の勤務が求められている医学部の地域枠卒の医師に不足地域での診療を要請したり、若手医師の臨床研修先になる病院の定員を調節したりすることができるようになる。対策で生じる効果も予測可能になるだろう。
医師不足と偏在はかねてから問題になっている。特に地方では、休日や夜間の小児外来の増加などが要因で小児科医不足が深刻化しているという。子どもの医療助成が拡大して受診しやすくなったことや、昼間の診療時間内に来院できない親が増えたことなども関係していると言われている。
こうした背景もあり、電話やインターネットで相談できる窓口が広がりつつある。軽症で夜間救急外来にかかるという「コンビニ受診」を減らす効果も期待されている。国も04年度から小児救急電話相談「#8000」事業に取り組んでおり、全国共通ダイヤルの#8000に問い合わせると現在地の都道府県の相談窓口に繋がる。だが、内閣府が14年度に行った調査によると、全体の9割、就学前の子どもがいる世帯でも6割が存在を知らなかったという。
一方、医師不足の加速を懸念して「新専門医制度」の開始が1年延期となった。指導と研修のために都心部の大病院に医師が集まることで、地方の医師不足を招く恐れがあるという。
政府は医師不足対策として医学部定員を増やしたが、医師が都市部に集中し、地方で不足するという偏在の解消には至らなかった。今春には、国内で37年ぶりとなる医学部の新設が仙台で実現。卒業生らが東北に定着すれば医師不足の解消に大きく貢献するだろう。しかし、これまでの経緯を見て、そう簡単なことではないのは明白だ。地方に勤務するメリットを示せなければ、加速する偏在を食い止めるのは難しいかもしれない。(編集担当:久保田雄城)