日弁連、警察の監視カメラ設置・運用に「法制定」要求

2016年9月19日 19:35

 参院選挙公示前に大分県警別府署の署員が現職・野党候補を支援する連合大分東部地域協議会などの入った建物敷地内に無断で立ち入り、樹木などにカメラ2台を設置し、人の出入りを隠し撮りしていた問題で、日本弁護士連合会(中本和洋会長)が18日までに「監視カメラの設置・運用に対する法律」を定めるよう会長声明を発表した。

 中本会長は「国民には肖像権が保障されており『法律の定め』や『裁判官による令状がない限り、原則として警察から写真撮影されない権利がある』。例外として許されるのは現行犯的状況があり、必要性・相当性を満たす場合(最高裁昭和44年12月24日判決)や重大犯罪の嫌疑が濃厚な被疑者の人定に必要な限度で、公共の場所等で特定の個人を対象として撮影する場合(最高裁平成20年4月15日決定)等に限定される」としている。

 また「宗教施設や政治団体の施設など個人の思想・信条の自由を推知し得る施設に向けた無差別撮影・録画は原則的に違法であることは、労働運動等の拠点となっている建物に向けた撮影・録画を前提とせずに単なるモニタリング(目視による監視)の目的で設置されただけの大阪府警の監視カメラの撤去を命じた大阪地裁の平成6年4月27日判決(その後、最高裁で確定)からも明らか」とした。

 中本会長は、警察庁が今年8月26日付けで、監視カメラを用いた捜査を任意捜査として、必要な範囲において相当な方法であれば許されるという趣旨の『捜査用カメラの適正な使用の徹底について』と題する通達を出したことについても「通達は憲法で保障されるプライバシー権、表現の自由等を侵害する捜査方法を捜査機関の判断で自由に行うことを可能にするものであり、警察実務において人権侵害を日常化するおそれがあるから撤回されるべき」と提起。

 そのうえで「日本弁護士連合会は大分県別府警察の監視カメラの設置が明らかに違法であることを指摘、抗議するとともに、監視カメラの設置・運用に対する法律を定めるべきことを表明する」と法規定するよう求めている。

 別府署の行為については、大分県警本部長が『公開質問状』を出していた連合大分に9日付けで回答し「必要性・相当性が認められない撮影が行われていた。心よりお詫び申し上げます」と陳謝。関与した警察官4人を大分地検に任意送致、監督責任で別府警察署長ら6人を懲戒処分にしたと報告した。(編集担当:森高龍二)

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