電力自由化から半年。世界的に注目されるデマンドレスポンスへの道
2016年9月17日 22:44
2016年4月に鳴り物入りで導入された「電力自由化」から半年近くが経とうとしている。
8月31日時点で、通信事業者、放送事業者など異業種も含め、計339の小売電気事業者が経済産業省に登録されている。しかしながら、その全てが本格的に稼働しているわけではなく、登録だけ済ませて、未だ様子を窺っている業者も多いようだ。
電力自由化の最大のメリットは何といっても、事業者ごとの多種多様なサービスの中から、自分に合ったものを選択できる点だ。発電方法やオプションプランなどにも事業者ごとにこだわりや強みがあるので、単純に価格だけを比較するのではなく、ライフスタイルに合ったものを選択したいものだ。
小売電気事業者の選択にあったっては、他にも十分注意しておかなければいけないことがある。それは、将来を見据えて選ぶということだ。現状はスタートダッシュの時期で競争が活発に行われているので、電気料金も格安の事業者が多い。しかし、それがいつまで続くかは未知数だ。そもそも、すべての新規参入業者が自社で創電や送電をしているわけではなく、多くはどこかから電力を仕入れて、文字通り小売りをしているだけの窓口事業者だ。つまり、高い値段で電力を仕入れなければならない状況になれば、大幅な値上げも余儀なくされてしまうというわけだ。最悪の場合、淘汰される新電力会社も出てくるだろう。目先のメリットだけで選んでしまうと、将来的には大きな負担を強いられることになるかもしれない。
このような背景もあり、今、デマンドレスポンスへの取り組みが、にわかに注目を集めている。デマンドレスポンスとは、簡単に言えば、電力消費の抑制や制御を事業者側だけでなく、消費者側にも協力してもらおうという仕組みだ。例えば、ピーク時間帯に電力価格が高くなるような料金設定をして使用抑制を促したり、節電ポイントを還元したりするなどのサービスが考えられるが、これらを効率よく実施し、デマンドレスポンスサービスを実現するためには、スマートメーターやHEMSなどの導入が必須となる。しかしながら現状は、大手の事業者が自社サービス用に構築しているシステムか、ユーザの使い勝手が限られた特定メーカーによる HEMS 機器のみで、新規参入の事業者がこれに対抗しうるシステムを構築しようと思えば、多額の設備投資が必要だ。さらに時間もかかるうえに、将来のサービス拡充も可能な汎用の仕組みとなるとハードルが高い。
そんな中9月5日、センサネットワークを構築する無線デバイスのノウハウで高く評価されているロームと、ITソリューションの分野で15億台を超える機器をネットに繋いでいきた実績とノウハウを有するACCESS社が共同で「スマートハウス向け電力マネージメントソリューション」を開発した。
同ソリューションは、汎用のホームゲートウェイにデータの収集・可視化・制御を可能とするインテリジェント機能、並びにWi-SUNやECHONET Lite機能を拡張し、Wi-SUN 対応のスマートメーターやEnOcean対応の温度・開閉・照度センサ、ECHONET Lite 対応家電を集約することで、事業者とエンドユーザそれぞれが家電の電力消費を監視し制御できる仕組みを構築する。また、システム全体のハブとなるホームゲートウェイには、ACCESSの世界最小クラスのエッジコンピューティング「NetFront(R)Agent」を搭載し、クラウド連携やWi-SUN 対応センサからのデータの収集・可視化、ECHONET Lite 対応家電の制御機能といった機能を付加しているという。
最大の魅力は、同ソリューションを利用することで、事業者がスクラッチから開発することなく、高度な電力マネージメントサービスを迅速かつ簡単に導入することができることだ。こういったソリューションやシステムが普及すれば、事業者だけでなく、電力自由化やそれに付随するサービスの普及拡大を大幅に後押しすることになるだろう。逆に言えば、このような最新の技術を受け入れられない業者から淘汰されていくのかもしれない。(編集担当:藤原伊織)