【どう見るこの株】任天堂は再動意で上値試す、新ゲーム機「NX」への期待高まる
2016年9月12日 12:11
任天堂<7974>(東1)に注目したい。スマホ向け「ポケモンGO」が世界的大ヒット作となり、周辺機器「ポケモンGOプラス」の発売を予定している。また9月8日には米アップルiPhoneユーザーへの「スーパーマリオラン」配信を発表した。16年冬には新ゲーム機「NX」発表(17年春発売予定)も期待されている。株価は「スーパーマリオラン」配信を好感して再動意の形となった。上値を試す展開だろう。なお10月26日に第2四半期累計業績発表を予定している。
■ゲーム機・ソフトの大手
ゲーム機・ソフトの大手である。16年3月期の品目別売上構成比はゲーム専用機ハードウェア53.1%、ゲーム機専用ソフトウェア45.5%、スマートデバイス・IP関連収入(スマートデバイス向け課金収入、ロイヤリティー収入など)およびその他1.5%、地域別売上高構成比は日本26.9%、米大陸44.8%、欧州25.2%、その他3.1%だった。
主力はゲーム機「ニンテンドー3DS」および「Wii U」のハードウェア・ゲームソフトである。16年3月期の販売実績は「ニンテンドー3DS」のハードウェア679万台・ソフトウェア4852万本、「Wii U」のハードウェア326万台・ソフトウェア2736万本だった。
なお16年8月、シアトルマリナーズ運営会社の持分の一部売却について、メジャーリーグベースボール機構の承認を得て売却が正式に決定した。売却額は661百万米ドルである。
■新コンセプトゲーム機「NX」を17年春発売予定
中期成長に向けた戦略として、ビデオゲーム専用機ビジネスにおける全く新しいコンセプトのゲーム機「NX」を開発中(17年3月発売予定)である。従来どおりソフトウェア主導でハード・ソフト一体型のユニークなビジネスを経営の中核とする方針だ。
また16年3月には当社初のスマートデバイス向けアプリ「ミートモ」の配信を開始した。さらにゲームと連動する新カテゴリー商品として、当社のキャラクターをフィギュア化・カード化したamiiboの発売など、ゲームの枠を超えて「任天堂IP(知的財産)に触れる人口を拡大する」ことに注力する方針だ。
16年8月にはジェスネット(札幌市)を子会社化し、ジェスネットがアジオカ(愛知県)からビデオゲーム卸事業を譲り受けると発表した。本子会社化および本事業譲受(いずれも17年4月3日実行予定)により、商品開発から供給に至るまでの一貫体制を強化する。
■米アップルiPhone向け12月配信開始
9月8日にはスマートデバイスに最適化した新しいアクションゲーム「スーパーマリオラン」の配信決定を発表した。16年12月に100カ国以上のApp Storeにおいて、米アップルiPhoneユーザー向けに配信開始する。コンテンツ制作は当社、サーバー関連はDeNA<2432>が担当し、収益は役割分担に応じて分配される。
■クリスマス商戦などが需要期、ヒット作や為替の影響が大きい収益構造
ゲーム機・ソフトはクリスマス商戦などが需要期となるため第3四半期(10~12月)の構成比が高く、収益は新型ゲーム機および新作ゲームの発売時期やヒット作の有無の影響も受けやすい。さらに海外比率が高いため為替影響を受けやすい。特に経常利益は、米ドル建て預金など外貨建て資産に係る営業外での為替評価(為替差損益)が大きく影響する収益構造だ。
■17年3月期通期は大幅増益予想
今期(17年3月期)通期の連結業績予想(4月27日公表)は売上高が前々期(16年3月期)比0.9%減の5000億円、営業利益が同36.9%増の450億円、経常利益が同56.3%増の450億円、純利益が同2.1倍の350億円としている。想定為替レートは1米ドル=110円、1ユーロ125円(16年3月期末レートは1米ドル=112円68銭、1ユーロ=127円70銭)である。
第1四半期(4~6月)はハードウェアの販売減少や為替の円高影響などで大幅減収となり、営業外費用で為替差損350億円(第1四半期末為替レートは1米ドル=102円91銭、1ユーロ=114円39銭)を計上したことも影響して赤字だった。ただし通期は大型タイトル発売などで増益予想である。
「ニンテンドー3DS」については、世界累計販売本数が2億本を突破した「ポケントモンスター」シリーズの最新作「ポケントモンスター サン・ムーン」を11月に世界で発売予定である。また「ポケモンGO」の周辺機器として当アプリと連動する「ポケモンGOプラス」を発売する予定だ。スマートデバイス向けアプリでは、16年3月配信「ミートモ」に続いて「ファイアーエムブレム」「どうぶつの森」などの配信を予定している。
米Niantic社が開発・配信したスマートデバイス向けアプリ「ポケモンGO」については、持分法適用関連会社のポケモンが「ポケットモンスター」の権利保有者として「ポケモンGO」のライセンス料および開発運営協力に対する対価を受け取るが、持分法適用関連会社のため連結業績に与える影響は限定的で、業績予想に織り込み済みとしている。
■株価は調整一巡して再動意、上値試す
株価の動きを見ると、世界的ヒット作「ポケモンGO」を好感して7月19日高値3万2700円まで急伸した。その後は一旦反落して2万円~2万5000円近辺でモミ合う展開だったが、米アップルへの「スーパーマリオラン」配信を好感して9月8日に2万9200円まで急伸した。調整一巡して再動意の形だ。
9月9日の終値2万7625円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS291円35銭で算出)は95倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間150円で算出)は0.6%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS9662円73銭で算出)は2.9倍近辺である。時価総額は約3兆9136億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインの形だ。再動意となって上値を試す展開だろう。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)