【積水ハウスの2016年2~7月期決算】受注好調で、過去最高益更新の通期見通しをさらに上方修正

2016年9月9日 20:30

■通期で初の売上2兆円、純利益1000億円超に上方修正


 9月8日、積水ハウス<1928>が2016年2~7月期決算を発表した。

 計画を上回った中間期の業績や好調な受注状況を背景に、通期業績見通しを上方修正した。

 売上高を150億円上積みして7.6%増の2兆円、営業利益を50億円上積みして16.9%増の1750億円、経常利益を10億円上積みして10.8%増の1780億円、当期純利益を20億円上積みして34.0%増の1130億円とした。通期では営業利益、経常利益は4期連続の過去最高更新となる計画。売上高、最終利益も過去最高を見込む。売上高が2兆円に乗れば創業以来初になる。

 中間期の業績は、売上高が1.9%増の9496億円、営業利益が3.0%減の792億円、経常利益が10.0%減の786億円、四半期純利益がほぼ横ばいの520億円。全て期初に計画した中間期の見通しを上回った。四半期純利益の通期業績見通しに対する進捗率は46.0%。1株当たり四半期純利益は74.09円から74.63円に増加している。中間配当は当初の予想通り前期比で5円増配して32円とした。

 セグメント別に見ると、売上高は戸建住宅事業、リフォーム事業、分譲住宅事業、マンション事業が減収だったが、都市再開発事業、国際事業が20%を超える増収で、賃貸住宅事業、不動産フィー事業とともに売上高をプラスに押し上げた。利益は「開発型ビジネス」の分譲住宅事業、マンション事業、都市再開発事業は大幅減益だったが、前年同期に大型ビルの売却益を計上した反動が大きい。主力の戸建て住宅事業は減収ながらも利益率は改善で、賃貸住宅事業、リフォーム事業、不動産フィー事業は2ケタ増益だった。

 全般的に好調だったのが受注で、全体の受注高は1兆418億円で前年同期比4.9%増。戸建住宅1.8%増、賃貸住宅は9.2%増と主力事業で健闘した。受注残高は9609億円で10.6%も増加した。これは通期でも、さらに来期にかけても明るい見通しにつながる。

■賃貸住宅の好立地・高品質戦略が不動産フィー事業の拡大につながる


 コア事業の「請負型ビジネス」の戸建住宅事業、賃貸住宅事業とも、収益性を高めた要因は「中・高級化」の商品戦略である。

 「請負型ビジネス」ではネット・ゼロ・エネルギー・ハウス「グリーンファースト ゼロ」や3・4階建てなど、高付加価値を追求する販売戦略を進める戸建住宅事業は、日銀のマイナス金利政策が影響して住宅ローン金利が低水準で推移するという追い風も吹き、受注高は昨年12月から今年8月まで9ヵ月連続で前年同月を上回っている。しかも1棟あたり単価は1月末から41万円増の3741万円に上がり、中間期の営業利益率は前年同期の11.9%から12.5%に高まっている。

 相続税対策で伸びてきた賃貸住宅事業の事業環境は、供給過剰で大都市圏の空室率の上昇が問題化しているが、積水ハウスでは「エリアは都心部に注力し、入居したくなる住宅を提供する」という「好立地、高品質」戦略を進めている。品質の向上で入居希望者のニーズに応えれば入居率が高まり、賃貸住宅の価値を長く維持できるという意識が、オーナーの間でも浸透してきた。3・4階建ての金額比率は60%まで拡大し、1棟あたり単価は1月末比で628万円増の8305万円と大幅に上昇した。

 「ストック型ビジネス」のリフォーム事業は業界最多の約77万棟のストックを活かし、大型リノベーション、賃貸向けリフォームの受注が好調。不動産フィー事業は中間期の営業利益の伸びが15.3%と大きく、賃貸住宅の竣工に伴って管理物件も増える好循環が期待できる。7月末の管理戸数は57.6万戸で1月末から1万戸以上増え、管理物件の入居率は0.2ポイント増の96.7%で過去最高を記録した。

 「開発型ビジネス」では、都心部で開発した大規模ビルを不動産投資信託(REIT)に売却する件数、売却額が計画を上回り業績に寄与する見通し。国際事業は、アメリカでの住宅販売の増加などが寄与して、黒字化する見込み。

 初の売上高2兆円、純利益1000億円の大台、ROE10%以上の目標達成に向けて、順調な進捗と言えるだろう。(編集担当:寺尾淳)

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